昨日に続き

未見だったので録画していた『張込み』(1958年・松竹/監督:野村芳太郎)を観る。松本清張:原作・橋本忍:脚本・野村芳太郎:監督というトリオの原点となった名作サスペンスです。

警視庁捜査1課の刑事・下岡(宮口精二)と柚木(大木実)は、強盗殺人犯の石井(田村高広)を追って佐賀にやってきます。3年前に別れた女・さだ子(高峰秀子)に会いたがっていると主犯(内田良平)が自供したからです。さだ子は年長の銀行員(清水将夫)の後妻になっており、下岡と柚木は家の向かいの旅館で張込みを開始し……

横浜駅から九州行きの列車に駆け込む二人の男、この車内の描写は秀逸。佐賀警察に出向き、二人が警視庁の刑事であることがわかります。目的の家を探し当て、旅館の2階へ。「張込みだ」というセリフとともにクレジットタイトルが始まる導入部は隙がなく、見事な出来ばえ。

映画は柚木の視点で語られます。現実が少しずつ見えてくる巧い展開です。さだ子を見張るうちに、柚木が恋人(高千穂ひずる)との私生活に思いを重ね、それが伏線となっていて情感あふれる内容になっています。昭和30年代の社会背景と密着した社会派ミステリーの傑作で~す。