懐かしの想い出映画

DVDで『絶唱』(1958年・日活/監督:滝沢英輔)を観る。何度も映像化されている大江賢次の純愛メロドラマ。

昭和16年の山陰地方、京都の大学に行っている山林大地主の息子・順吉(小林旭)は、帰省した折、父親(三津田健)が町の実業家の娘との結婚を強いたため激しい口論となります。順吉は素朴で可憐な山番の娘・小雪浅丘ルリ子)を以前から愛していたんです。小雪も順吉を慕っており、二人は周囲の反対を押し切って松江で生活。宍道湖の見える経師屋の2階に愛の巣を構えます。二人を励ましたのが、大谷(安井昌二)たち順吉の読書会のメンバー。戦局が苛烈になり、順吉は戦地へ。残された小雪にとっては、順吉と約束した時間に木挽唄を歌うのが唯一の楽しみとなります。終戦を迎えた時、小雪は胸の病に侵されていて……

私がスクリーンで初めて小林旭を観たのがこの作品。浅丘ルリ子とも初見でした。日活作品は封切館で観ることはなく、近所の三本立て映画館で観るのが常でしたから、子供だった私はこの作品が目的でなく、併映されていた東映東宝のチャンバラ映画が目的だったと思うのですが、何故かこの作品が印象に残っているんですよ。

ドラマの骨格は単純ながら、しっかりしています。アキラとルリ子が歌う木挽唄が情感を高め、滝沢英輔の演出もキメ細かく、涙を誘いますな。アキラは「女を忘れろ」でレコードデビューするんですが、劇中で最初に歌ったのはこの「木挽唄(正確には吉野木挽唄)」じゃないかな。ルリ子も歌っているんですが、意外と上手いんです。封建的な親たちの頑固さも、それへの若い二人の反抗も、古めかしい紋切り型で、通俗的になっているのが文芸作品としては弱いものにしています。これまでアキラとルリ子の共演作品を多く観ていますが、二人のコンビの最高傑作。

ちなみに、この後、映画では1966年に舟木一夫和泉雅子、75年に三浦友和山口百恵のコンビで映画化。テレビでは5度ドラマ化されていま~す。