有名な仇討ちだが

友人に送ってもらった『曾我兄弟・富士の夜襲』(1956年・東映/監督:佐々木康)を観る。日本三大仇討ちのひとつ、曾我兄弟の仇討ちイーストマン東映カラーで描いた歴史絵巻です。

一万・箱王の父・河津祐泰は、河津の所領を狙う工藤祐経月形龍之介)によって、将軍・源頼朝片岡千恵蔵)への反逆者として暗殺されます。母(花柳小菊)は曽我祐信(3代目・中村時蔵)と再婚し、祐経への怨みを忘れようとしますが、兄弟は仇討ちを決意。時は過ぎ、一万は十郎(東千代之介)と名を改め、箱王(中村錦之助)は箱根権現に仕えて母と離れて暮らしています。富士の裾野で頼朝による巻狩が催されることになり、狩場奉行となった祐経が箱根権現に参拝にきたのを見た箱王は祐経を狙いますが、逆に祐経の配下に追われて逃走。白拍子化粧坂少将(三笠博子)に救われます。箱王は12年ぶりに兄と再会。祐経は箱王を追って十郎の邸に踏み込み、十郎の恋人・白拍子の虎(高千穂ひずる)を陣屋に連れ帰ります。箱王は元服して五郎と名を改め、十郎と祐経の陣屋を目指しますが……

原案の五都宮章人は、脚色の八尋不二たち当時京都在住の五人のライターの共同ペンネームですが、格別新しい解釈も見られず、結局富士の裾野の夜討ちのシーンだけが見せ場。千代之介と錦之助という売れっ子コンビを上手く活かして、佐々木康は東映らしい絢爛な娯楽時代劇に仕上げています。月形龍之介が憎々しくて、これぞ悪役。千代之介と錦之助がひきたつのは、月形の存在があればこそです。

大友柳太郎の畠山重忠は儲け役。幼い曽我兄弟(片岡千恵蔵の子である植木基晴と千恵が出演)が祐経の諫言で処刑されそうになるのを、頼朝への必死の嘆願で救ったり、仇討ちの時は兄弟にそれとなく祐経の陣屋を教え、通行手形まで渡すという武士の情を知る理想のサムライとなっています。

北大路欣也源頼家役で出演。頼朝は千恵蔵でなく、右太衛門だったらよかったのにね、蘇我兄弟の義父役の3代目・中村時蔵は、中村錦之助のお父っつぁんで~す。