時代劇だったので

録画していた『サムライマラソン』(2019年/監督:バーナード・ローズ)を観る。日本初のマラソン大会と云われる“安政遠足(あんせいとおあし)”を巡る騒動を描いた物語。

1855年、黒船がやってきて外国の脅威が迫る中、安中藩主・板倉勝明(長谷川博己)は藩士たちの心と身体を鍛錬しようと山道を走らせる遠足の開催を宣言。安中藩の様子を探る隠密として代々引き継がれてきた唐沢(佐藤健)は、不穏の動きとして幕府に報告。幕府大老・五百鬼(豊川悦司)は以前から勝明を警戒しており、安中藩の遠足を謀反の動きとみて刺客団を放ちます。遠足が行われている中、刺客団が現れ……

海外の市場を意識して外国人監督を起用したのでしょうが、何もかもチグハグな酷い作品。歴史考証がデタラメ。刺客団の首領が使う拳銃がコルト・ピースメイカーなんですが、1855年ではまだ製造されていません。なんの説明もなく使うんだったらまだ許せますが、冒頭シーンでペリー(ダニー・ヒューストン)が五百鬼に贈ったものとなっているんですよ。英国人監督なので西部開拓史を知らなくても無理はないか。大老の後ろに鎧武者が並んでいたりして何じゃコリャです。セリフや所作が現代的と思ったら、遠足のスタイル(右手・右足、左手・左足で走る)は史実通り。

バーナード・ローズは黒澤時代劇をしっかりと見ているようですが、時代劇の文化を掌握しているとは思えません。『超高速!参勤交代』『引越し大名』と同じ土橋章宏の原作で、作り方次第で面白いものになったと思えるだけに残念。