比べて観ると

永井路子(97歳)さんが亡くなり、『草燃える(総集編)』を観る。『草燃える』は、彼女の小説『炎環』『北条政子』やエッセイを原作にした1979年のNHK大河ドラマ。女性作家の原作を初めて用いた大河で、尼将軍と呼ばれた北条政子を中心にして描いた大河初めての女性主人公でした。昨年放送された『鎌倉殿の13人』と同時代を扱っており、観比べるのも一興。

物語は、父・北条時政金田龍之介)の留守を預かっていた宗時(中山仁)が、公家化した平家の堕落ぶりに失望し、東国武士団の決起による武家政権樹立の夢を弟・義時(松平健)に語るところから始まります。その頭目として宗時が考えたのが伊豆に流されている源氏の嫡流源頼朝石坂浩二)。妹・政子(岩下志麻)と頼朝は惹かれあっていましたが、後妻・牧の方(大谷直子)を伴って帰ってきた時政の反対は強く、政子は平家方の山木兼隆長塚京三)に嫁ぐことになります。宗時は政子に恋している伊東祐之(滝田栄)を騙して、伊豆権現へ逃避行させるという手段で、政子を頼朝の許へ駆け落ちさせます。道化の役回りをさせられた祐之は、北条や頼朝に恨みを持ち……

伊東祐之は、伊東一族のひとりという物語を面白くするための架空の人物。石橋山の合戦で、宗時を討ち取り、曽我兄弟を巻き込んで頼朝暗殺などを企てます。他にも義経国広富之)に味方する都の盗賊(黒沢年男とかたせ梨乃)、祐之を助ける祈祷師(美輪明宏)など多々登場。『鎌倉殿の13人』での主要な架空人物は善児(梶原善)と巫女(大竹しのぶ)ぐらいでしたけどね。

『鎌倉殿の13人』の軽さも面白かったですが、『草燃える』に出演している俳優陣の層の厚さと、演技の重厚さは、“総集編”を見ているだけでもわかりま~す。