週に一度は西部劇

録画保存したままだった『駅馬車』(1965年/監督:ゴードン・ダグラス)を観る。ジョン・フォードの名作『駅馬車』のリメイクです。リアルタイムで観て以来の再見。

舞台は荒野のアリゾナから緑豊かなワイオミングへ。インディアンもジェロニモ率いるアパッチからクレイジー・ホースが率いるスー族に変わっています。

ドライフォークの町の酒場で騎兵隊員が喧嘩して死んだことから、酒場女のダラス(アン・マーグレット)がその原因をつくったとして町から追い出されることになり、シャイアンに行く駅馬車に乗車。乗客は騎兵大尉の夫に会いに行くマロリー夫人(ステファニー・パワーズ)、マロリー夫人と同じヴァージニア出身の賭博師ハットフィールド(マイケル・コナーズ)、酒の行商人ピーコック(レッド・バトンズ)、家賃が払えずに追い出されピーコックの酒目当てで乗りこんだ呑んだくれ医師ブーン(ビング・クロスビー)、銀行の金1万ドルを横領したゲイトウッド(ボブ・カミングス)です。それに馭者のバック(スリム・ピケンズ)と護衛の保安官カーリー(ヴァン・ヘフリン)で出発。途中で刑務所を脱走したリンゴ・キッド(アレックス・コード)が乗りこんでくるといった具合にオリジナルと同じように展開していきます。

インディアンの襲撃は、ハットフィールドは死にますが騎兵隊の救援はなく駅馬車の連中だけで防ぎきり、ラストはプラマー一家とリンゴ・キッドの決闘。プラマー3兄弟でなく、プラマー(キーナン・ウィン)と二人の息子という構成。横領がばれてプラマーに助けを求めたゲイトウッドを逮捕にきたカーリーの足を撃って酒場の外に放り出し、ゲイトウッドを撃ち殺して金を奪うという凶悪ぶりをみせます。駅馬車が緑の森の中を左から右に駆け抜ける鳥瞰映像は、カラーワイドの特質を活かした景観ですが、ゴードン・ダグラスの持ち味はアクション演出。フォードの駅馬車襲撃シーンの迫力には及ばないものの、インディアンが騎兵隊のキャンプを奇襲して皆殺しにする冒頭シーンをはじめとして、血糊ベタベタの暴力演出は当時としては過激だったと思われます。詩情とは縁のない世界ね。

クレジット・トップはアン・マーグレットで、クレア・トレヴァの打ちひしがれた酒場女と異なり、若々しい鉄火女ぶりを見せ、存在感を出しています。主人公のアレックス・コードはこの作品がデビュー作。サイレント時代の西部劇大スターのウィリアム・S・ハートに容貌が似ているということで抜擢されましたが、結局この作品だけの人。

ジェリー・ゴールドスミスが音楽を担当していますが、エンドクレジットでアン・マーグレットが歌う「シャイアン行き駅馬車」の作詞はリー・ポックリス、作曲はポール・バンスです。

オリジナルが素晴らしいので、録画保存していたものの観る気がおきなかったのですが、再見してみると意外と悪くない作品です。ゴードン・ダグラスの西部劇では、上出来の部類になりま~す。