懐かしの時代劇

録画していた『大菩薩峠』(1957年・東映/監督:内田吐夢)を再見。何度も映画化されている中里介山の長編小説を内田吐夢が監督。

武州の剣客・机龍之助(片岡千恵蔵)は大菩薩峠で巡礼の老人を無造作に斬り、盗賊の七兵衛(月形龍之介)が老人の孫娘のお松(丘さとみ)を助けて江戸へ。龍之助は奉納試合で宇津木文之丞(波島進)を殺し、文之丞の許婚者・お浜(長谷川裕見子)を犯して妻となし、江戸へ。

それから4年、龍之助とお浜の間には、一子郁太郎が生まれており、文之丞の弟・兵馬(中村錦之助)は島田虎之助(大河内伝次郎)の道場で腕を磨いています。龍之助は新懲組に加わり人斬り稼業。兵馬はお松と知りあい、お松を診た医者(左卜全)から龍之助の居所を知ります。兵馬との決闘をとめようとしたお浜を斬り、龍之助は新懲組と京へ。兵馬も龍之助のあとを追って京へ。お松も伯母(日高澄子)に売られて京へ。机家の下男だった純朴な与八(岸井明)が郁太郎を故郷へ連れ帰ります。

京・島原の茶屋で龍之助はお松と遭遇。老巡礼の鈴の音を聞き、これまで殺した数々の人の幻を見て狂気となってさまよい出ます。正気に戻ったのは大和路。お浜と生き写しの女・お豊(長谷川裕見子の二役)に出会った龍之助は空虚な心に火がともりかけます。しかし、お豊は横恋慕する男・金蔵(片岡栄二郎)にかどわかされ、龍之助は善も悪も虚空の彼方へおいやり、天誅組の敗残兵と行動。残党狩りの火薬に眼を焼かれ、盲目となりますが追手の群れを次々に斬り倒し、河の中へ消えます。

原作は、本の冊数で全18冊(41巻・47万字以上)の未完(椰子林の巻の後、中断)の大長編。第一部から多彩な人物が登場し、内田吐夢は短いカットによる展開で手際よく処理しています。島田虎之助が襲ってきた新懲組をたたき斬る場面や、盲目になった机龍之助が“音無しの構え”で斬り倒していくラストシーンの殺陣は迫力があって見応えがありま~す。