三部作なので

録画していた『大菩薩峠(完結編)』(1959年・東映/監督:内田吐夢)を再見。

舞台は甲府に移り、机龍之助(片岡千恵蔵)は神尾主膳(山形勲)に匿われて辻斬り三昧。宇津木兵馬(中村錦之助)は主膳の奸計により盗賊として甲府城内の牢屋に入れられます。主膳は財産目当てで名家の娘・お銀(喜多川千鶴)と縁組をもくろみますが、お銀は拒絶。お銀は顔に醜い痣があって人嫌いなのですが、盲目の龍之助に心を許し、二人は惹かれあいます。お松(丘さとみ)は主膳の屋敷に奉公にあがり、甲府城の図面を盗み出して盗賊の七兵衛(月形龍之介)に渡し、七兵衛によって兵馬は牢獄から脱出。逃げ込んだ先が甲府勤番支配の駒井能登守(東千代之介)の屋敷で、能登守は兵馬から主膳の悪事を知ります。主膳は江戸で取り調べを受けることになり、家来に命じて悪事を知る龍之助とお銀を焼き討ち。襲撃してきた主膳の家来を斬り倒した龍之助はお銀と甲州街道をさまよい、たどり着いたのが、龍之助が殺した妻・お浜(長谷川裕見子)の郷里。お浜の亡霊に誘われるように、息子の名前を呼びながら龍之助は大雨で増水した笛吹川の濁流にのまれます。

原作はこの後も続き、収拾困難なほど多岐にわたっているので無理に結末をつけた感じです。私は原作を読んでおらず、映画でしか知らないのですが、大井廣介:著の『ちゃんばら藝術史』によると、「筋で面白いのは5冊目までで、以後は龍之助の出る件りは固唾を飲ませるが、龍之助の出ない件りがとめどもなく綿々と続き退屈した」とあるように、机龍之助が登場する場面が意外と少ないようです。

主人公の机龍之助は秩序の破壊者であり、そのキャラは丹下左膳眠狂四郎といった後年の大衆小説のヒーローに影響を与えたと云われています。千恵蔵のキャラとはイメージ的に違うのですが、演技でカバーしていましたね。千恵蔵って、名優ですよ。

内田吐夢の演出は、多彩な登場人物に一応の型を与えて複雑な物語を手際よくまとめ、一貫して重々しい迫力で描いています。この作品を越えることは難しいでしょうね。

原作の持つ哲学性の表現が難しいせいか、テレビでは1961年にTBSで放映した平幹二朗主演のものがあるだけ。私は膨大な原作をドラマで知りたいと思っているのですが、無理だろうなァ。