録画したまま放ったらかしていた『渡世人』(1967年・東映/監督:佐伯清)を観る。満州事変を背景に利権あさりに狂奔するヤクザの中にあって、真の任侠道を押し通す男を描いた物語。
満州事変が勃発し、戦争回避のためにやってきた北天竜(石山健二郎)と彼に協力する政宗組の親分(水島道太郎)が、上毛組の成瀬(若山富三郎)と上毛組に雇われた旅人・三上(鶴田浩二)に殺されます。上毛組の親分・藤井(金子信夫)と黒金組の親分・広川(南原宏治)は戦争拡大を利用して利権を得ようとしているんですな。政宗組の代貸・児玉(名和宏)は、彼らと組んで利権を得ようとしており、昔気質の若頭・大泉新次郎(梅宮辰夫)が邪魔な存在。新次郎は何者かに襲われ、逆に相手を刺し殺して服役。三上は横恋慕して言い寄る児玉から新次郎の妻・お登喜(市川和子)を助けます。政宗組親分殺しで身代わり入所していた黒金組子分の満州虎(御木本伸介)が、肺病での死に際に新次郎に真相を告白。出所した新次郎は、親分の仇を討つために上州へ。刑務所で親しくなった佐々木(城卓矢)が上毛組の賭場に出入りしており、三上の居所がわかります。三上の家にはお登喜がいて……
一宿一飯の義理で主人公の親分を襲ったものの、主人公の妻の世話をし、主人公を殺しに来たワカトミを殺し、主人公と一緒に殴り込んで死ぬという鶴田が、いいところを全てかっさらっています。主演の梅宮辰夫は存在感が薄いです。主題歌を歌っている城卓矢が出演していますが、同じ時期に東映任侠映画に出演していた村田英雄や北島三郎と比べると、演技はド下手。役者次第ではもっと面白くなったのかもしれませんが、残念ながら駄作。梅宮辰夫はキャラ的に不良か軟派が似合っており、硬派な侠客はむいていませ~ん。