役者期待で

録画していた『ワイルド・リベンジ』(2022年/監督:ランドール・エメット)を観る。麻薬密売組織への復讐アクション。

シェルビー(ジャック・ヒューストン)とルビー(ウィラ・フィッツジェラルド)は婚約を機に、薬物ときっぱり手をきり、人生を再出発することを義兄(ジョン・マルコビッチ)たち家族に誓います。しかし、結婚を目の前にして、ルビーが密売人に騙されて薬物に手を出して死亡。シェルビーは危険な薬物をルビーに渡した売人たちへの復讐を決意。薬物の供給元を追って、売人たちを仕末していきます。息子を薬物で失った過去を持つ老保安官(ロバート・デ・ニーロ)がシェルビーを追跡。シェルビーはコヨーテと呼ばれる元締めを倒しますが、コヨーテの背後に黒幕がいることがわかり……

デ・ニーロとマルコビッチの老優二人による復讐物語を期待したのですが、傍観者と黒幕。前半はシェルビーとルビーが薬物を断ち切るまでの苦労話。後半はアクションの連続ですが、とんとん拍子に進みすぎて緊迫感なし。デ・ニーロとマルコビッチは何でこんな映画に出たんだろうネ。

 

任侠映画といえば

録画したままだった『昭和残侠伝』(1965年・東映/監督:佐伯清)を再見。“昭和残侠伝”シリーズは全部で9作あり、これは記念すべき第1作。

終戦直後の浅草、新興ヤクザの新誠会は闇物資を提供することで露天商の支配を拡大。新誠会に対抗しているのが昔気質のテキヤ神津組。神津組の若者・政(松方弘樹)と五郎(梅宮辰夫)が新誠会のゴロツキ(亀石征一郎・室田日出夫・八名信夫関山耕司など)とケンカし、妹を捜している渡世人・風間重吉(池辺良)が二人を助けます。新誠会のボス・岩佐(水島道太郎)に命じられた代貸・羽賀(山本麟一)が神津組に浅草を一緒に支配することを提案。組長の源之助(伊井友三郎)はこれを拒絶。源之助は何者かに撃たれ、遺書を代貸の江藤(菅原謙二)に託して死にます。数日後、江藤の弟分で露天商からも慕われている清次(高倉健)が復員。清次にはテキヤ石本組の娘・綾(三田佳子)という恋人がいましたが、父親が死んで石本組をのこすために代貸だった西村(江原真二郎)と結婚していました。清次は源之助の遺言で神津組を継ぐことになり、兄貴分・江藤の協力を得て、露天商の商品集めに奔走。執拗に妨害する新誠会の縄張りで商品を調べていた政が捕まります。政の恋人・ユキ(梓英子)の知らせで清次が新誠会の事務所に乗り込み、政を奪還。傷を負った清次の腕から風間が銃弾を抜きとります。見交わす目と目は男の友情。五郎の恋人・美代(水上竜子)は娼婦で、結核を患っています。五郎は組と美代のために新誠会の賭場で金を作りますが、新誠会が待伏せ。殺された五郎の葬式に美代が現れ、風間と再会し、風間の妹と判明。美代は入院しますが、風間に看取られて死にます。石本組の露天商のために新誠会に協力していた西村は、約束を破られ、新誠会に殴りこんで殺され、神津組が露天商のために建築中だったマーケットが新誠会に焼かれて炎上。清次はついにドスを手にして……

タイトルバックに健さんが歌う「唐獅子牡丹」が流れ、ラストは「唐獅子牡丹」の歌をバックに池辺良と一緒に殴り込み。そして、健さんの背を彩る唐獅子牡丹の刺青が鮮烈な印象を残す立ち回り。シリーズの基本パターンは、第1作でできあがっていますな。プロデューサーの俊藤浩滋は、武骨な健さんの相手役には色気のある池辺良しかいないと考えていました。しかし、池辺はヤクザ映画には全然乗り気ではありませんでした。池辺の自伝によると「俊藤さんの声涙、倶に下ると見えた口説と東宝では味わったことのない三顧の礼にも似た嬉しい申し入れに屈服。出演を承諾してしまった」とのこと。それにしても、健さんと池辺が肩を並べて殴り込みに行く男同士の道行きに、♪唐獅子ぼたーん~の歌がかぶさるクライマックスは何度みても昂揚させられま~す。

 

ポルノといっても

録画していた『らしゃめんお万・彼岸花は散った』(1972年・日活/監督:曽根中生)を観る。金髪の女賭博師が異父妹のために悪ヤクザと戦う任侠ポルノ。

刑期を終えて出所したお万(サリー・メイ)は長崎に帰ってきますが、母親が女将をしていた料亭はもうなく、そこはヤクザの稲荷組の事務所にかわっています。盲目の壺振り名人・半次(高橋明)とのサシの勝負に敗北。親分の留吉に借金したことから、お万は稲荷組の賭場で壺を振ることになります。留吉の目的は、お万の身体。一方、お万の異父妹・お菊(山科ゆり)は不良仲間“莫蓮組”の女番長となり、スケベー男たちから金をまきあげています。稲荷組は莫蓮組を狩り始め、捕まえた女たちをリンチ。お菊も捕まり、留吉に犯されます。お菊を自由にするために、お万は留吉の条件をのみますが、お菊は女郎屋に売られ……

私がサリー・メイを知ったのは金髪演歌歌手としてで、日活ロマンポルノに出演していたのは知りませんでした。女賭博師といっても江波杏子と違って、簡単に男に身を任すところはポルノ。だけど、最後はちゃんとドスを持って殴り込みします。助ッ人は、情を交わした半次。盲目だけど、何本もドスを持って三下ヤクザを倒していきます。チン品として楽しめました。

 

名前だけでは

録画していた『反逆の報酬』(1973年・東宝/監督:沢田幸弘)を観る。恐喝が目的の男と復讐が目的の男が麻薬組織に挑むアクション映画。

報道カメラマンの村木(渡哲也)は、ベトナムの戦場で戦死した黒人兵から鍵とペンダントを預かります。遺言通り六本木のマンションを訪ねた村木が、謎の女性・秋子(鰐淵晴子)と一晩共に過ごしている間に、二人の男(藤岡重慶武藤章生)が村木の部屋を家探し。二人は桜井(成田三樹夫)の手下で、桜井産業は麻薬の密売で企業拡大していることがわかります。死んだ黒人兵は麻薬の運び屋で、村木は黒人兵の後任と間違われたのね。恐喝のネタとして桜井産業を探る村木の前に、桜井に復讐しようとしている沖田(石原裕次郎)が出現。沖田と桜井は仲間でしたが、2年前に桜井に裏切られ、崖から落とされて死んだと思われていました。沖田と村木は黒人兵の後任の麻薬の運び屋を見つけ、麻薬を奪取しますが……

ツッコミどころ満載のストーリー展開。はっきり言って脚本は破綻しています。沢田幸弘の演出はスタイリッシュで見せようとしていますが陳腐なだけ。昔の裕次郎だったらタバコをくゆらす立ち姿だけで絵になったのですが、二重あごの中年太りの裕次郎じゃあねェ。ワイルド感を出そうとしている渡哲也も、ただの乱暴男にしか見えませ~ん。

 

懐かしのアクション映画

録画していた『野獣狩り』(1973年・東宝/監督:須川栄三)を観る。東宝ニューアクションの一環として作られたクライムアクション。

舟木(藤岡弘)は凶悪犯が許せず、捜査活動にゆきすぎるところがある若手刑事。父の長太郎(伴淳三郎)も刑事で、そんな息子が危なかしくって見ていられません。“黒の戦線”と名乗る革命組織がポップ・コーラの社長を誘拐。企業秘密である原液の分析データを公表するように要求してきます。そして、社長の処刑通知を予告。米国の親会社は企業秘密を守るために、身代金として30万ドル(日本円にして8千万円)を用意。“黒の戦線”から刑事ひとりに身代金の入ったカバンを持たせるように指示され、舟木がカバンを持って彼らの指示通りに動きますが……

仮面ライダーで人気の出た藤岡弘東宝初主演作品。10階建てのビルの屋上を壁伝いに渡ったり、ビルからビルへ乗り移ったりと、藤岡弘はノースタントで挑み、アクションスターぶりを見せています。ストーリーには無理がありますが、手持ちカメラによる映像は臨場感にあふれ、悪くない出来です。当時、銀座4丁目の歩行者天国は話題になり、人出でいっぱいだったんですねェ。

 

週に一度は西部劇

DVDで『拳銃のバラード』(1967年/監督:アルフィオ・カルタビアーノ)を再見。ベテランのガンマンと若い賞金稼ぎが凶悪な強盗団と戦うマカロニウエスタン

若い賞金稼ぎニグロス(アンジェロ・インファンティ)は、ベドージャ(アル・ノートン)とキンキ(アントニー・フリーマン)の兄弟が率いる強盗団を追っています。町で一味だった男を見つけ、女とおネンネしている酒場の二階へ。男は気づいて衝立のうしろに隠れますが、サーベルを投げつけて殺します。階下では、ベドージャに罠をかけられ16年も刑務所に入っていた中年ガンマンのクッド(アントニー・ギドラ)が殺された奴の相棒を捕えてベドージャの居所を尋問。ニグロスとクッドはどちらがベドージャを倒すかでもめますが、お互いに早撃ちの妙技を見せ、戦う相手が同じことから、ニグロスは賞金、クッドがベドージャと決闘するという協定を結びます。二人がベドージャ一味を追って行った町は、すでに一味が銀行を襲撃して逃げ去ったあと。この銀行襲撃がガサツなマカロニには珍しく具体的にキチンと描けています。最初に銀行へ運ぶ金箱を乗せた駅馬車を待伏せして襲い、駅馬車を囮にして一味が銀行へ潜入。キンキの部隊が別の場所を襲って銀行を護衛している連中を誘き出します。その隙をついてベドージャ本隊が銀行を襲撃。潜入していた仲間が内部からベドージャを引き込むという段取りね。

メキシコ人の農民から一味が廃坑に向かったことを知らされたクッドとニグロスはダイナマイトの名人を仲間に加え、廃坑で決戦。クッドとニグロスは父親から譲られた同じペンダンを持っている兄弟で、最後は兄弟対兄弟の対決です。

マカロニのプロットはどれも似たようなもので、面白くなるかならないかは監督の腕次第。カルタビアーノはいろいろ趣向をこらし、がっちりと構成しています。カルタビアーノはこれが初監督作品ですが、マカロニの持つ面白さを全て結集した感じ。彼はなかなかの才人で、監督だけでなく脚本も書き、俳優としてもベドージャ役(アル・ノートンは輸出向け芸名)で出演。この悪党ぶりが実に良いんですな。雰囲気だけでなく動きもグッド。片手でライフルを撃つスタイルがきまっていました。『ロード島の要塞』や『スパルタカスの復讐』などのマカロニB級史劇の俳優(カルタビアーノ名)兼スタントマンだったことが動きの良さに出ていますね。アントニー・ギドラの格闘シーンは後ろ姿ばかりで、カルタビアーノがギドラのスタントをしていたのでないかと私は密かに思っています。

マルチェロ・ジョンビーニが場面を盛り上げる音楽を担当。タイトルで流れる軽快な曲はベドージャ一味のテーマとして使われ、エンドクレジットで流れるペッピーノ・ガリアルディが歌う主題歌が主人公たちのテーマとして使われています。仲代達矢が、この伊語の主題歌を日本語でカバー。仲代の自伝によると、「これからの俳優は芝居だけでは物足らない」と考えて吹き込んだとのこと。♪~黒い影の、死神連れて~と、声の良さだけは魅力的です。ちなみに、私が観たDVDには、特典として英語版クレジットがあり、英語の歌も聴くことができま~す。

 

何故か未見で

DVDで『独立愚連隊西へ』(1960年・東宝/監督:岡本喜八)を観る。前作のヒットを受けて作られたシリーズ2作目。

終戦近い北支戦線、戦死公報後に帰還した連中が集められた左文字隊は独立愚連隊と呼ばれています。隊長の左文字少尉(加山雄三)・副長の戸山軍曹(佐藤允)以下、個性的な面々。転属先の玄武廟に向かう途中、霧の中で女ばかりの八路軍の輸送部隊に出くわして追いかけているうちに八路軍の本隊に四方を囲まれてしまいます。ひたすら走る左文字隊につられて八路軍も走り出し、マラソン状態になって両軍ともヘロヘロ。八路軍の梁隊長(フランキー堺)は「どうせなら元気な時に戦おう」と言って左文字隊と平和に別れます。フランキー堺のバタバタ走る姿が実に可笑しいんです。泥と汗を流すために水浴びをしていると、味方の警備隊に銃撃され、裸のまま逃げ出した左文字隊は、軍用トラックを襲って被服・武器を揃えて玄武廟に入城。しかし、そのことが露見し営巣送りとなります。左文字隊の中で一人だけ別行動となった神谷(堺佐千夫)は玄武廟慰安所の早川(中谷一郎)が新田参謀(田島義文)を射殺するのを目撃。新田は味方を捨てて逃げ出した卑怯な奴で、早川は死んだ戦友たちの仇討ちをしたのね。早川から左文字隊が捕まっていることを知らされた神谷は、早川に従って新田参謀に化け、軍旗を守って行方不明になっている北原少尉(久保明)の捜索を左文字隊にさせるように大江大尉(平田昭彦)に命じます。恋人(水野久美)を捜す衛生兵の小峯(江原達治)と志願してきた関曹長(山本廉)が加わり、出発しますが……

あだ名が独立愚連隊で、前作とのつながりは全くありません。戦場において何者にも守られず、自由奔放にふるまう行動が同じというだけね。加山雄三の初主演作ですが、周りの個性的な連中に助けられていますな。八路軍のスパイとして潜入してくる中丸忠雄が相変わらず胡散臭さを見せてグッド。激戦中にタバコを吸ったり、降参しない?と加山に持ちかけたりと中丸忠雄の持ち味が出ています。でもって、おいしいところを全部さらったのがフランキー堺。ユーモアだけでなく、武士の情けを知る大人ぶりを見せてくれます。水野久美と江原達治の関係など情実に流れる部分もありますが、カラッとした仕上がりで満足できる作品で~す。