テーマ曲だけは知っていたので

録画していた『おもいでの夏』(1971年/監督:ロバート・マリガン)を観る。思春期の少年たちの性への想いを描いた青春映画。

1942年の夏、戦火を逃れて15歳のハーミー(ゲーリー・グライムス)はニューイングランドの島で過ごしています。同じように島で過ごしているオシー(ジェリー・ハウザー)、ベンジー(オリヴァー・コナント)と砂浜で遊ぶ毎日。思春期の彼らは、性への好奇心が旺盛。ハーミーは丘の上の一軒家に住む美しい人妻ドロシー(ジェニファー・オニール)の魅力にとりつかれます。ある日、ドロシーの買い物を助けたことから、夫が出征して男手のないドロシーの家の手伝いをすることになり……

夫の戦死を知らされたドロシーが、ハーミーに初体験させて去っていくだけの物語ですが、マリガンは、こまやかな演出で思春期少年のせつないムードを盛り上げ、叙情豊かな作品に仕上げています。バックに流れるミシェル・ルグランの音楽もグッド。オープニングとエンディングで思い出を語るナレーションはマリガン監督がしていま~す。

 

ついで買いして

DVDで『博徒一家』(1970年・東映/監督:小沢茂弘)を観る。博徒の掟にしばられる男たちの苦闘を描いた任侠映画。

明治40年、賭博禁止法が制定され、博徒・荒政組は土建屋の看板をかかげることになり、親分・荒木政五郎(志村喬)が引退して国枝(大木実)が二代目となります。国枝の兄弟分・関根(若山富三郎)は、国枝の兄貴分で組のために殴り込みをして服役中の桜井(高倉健)が二代目になるのが筋だと主張。正業の荒政組の組長に前科者は不適切と叔父貴衆に押し切られ、桜井と関根は分家。1年後、国枝は工場建設で恩を受けた田沼(渡辺文雄)の要求で紛争を避けるために桜井の縄張りを渡します。関根は国枝の対応に不満を持ちますが、出所してきた桜井は、荒政組の客分・橘(鶴田浩二)から事情を聞き、国枝に従うことを決意。荒政組と田沼組は私鉄工事の入札を争っていましたが、国枝は紛争を避けるために田沼からの縁組の申し出を了承。それに怒った関根は田沼を襲いますが、桜井と橘が止めます。あくまでも田沼を殺すという関根と、桜井は一家のために対決。関根は桜井を殺すことができず、自ら拳銃で自分を撃ちます。起工式の日、田沼は国枝に縁組の解消と工事の独占を告げ、怒った国枝は田沼の子分たちに刺されます。橘は「余計なことをした」と桜井に詫び、桜井と一緒に田沼組へ殴り込み……

名作任侠映画『総長賭博』と似たような設定。ワカトミの妹で健さんの恋人役は藤純子、ワカトミの女房役で桜町弘子が出演。悪知恵を駆使して、ふてぶてしい悪党ぶりを見せる渡辺文雄がグッド。なにしろ東大出身なので頭脳派ヤクザはピッタシ。武闘派ヤクザのワカトミと、土建屋として一家を支えようとする大木実の間で、ワカトミと同じような気持ちがあってもヤクザの掟の中で苦しむ健さんの苦悩という構造で、さっさとワカトミと一緒に渡辺文雄を殺していれば悩む必要はなかったと思う次第。健さんが主題歌「白刃の盃」を歌っていますが、レコード化されていないようで~す。

 

未見だったので

DVDで『日本侠客伝・昇り龍』(1970年・東映/監督:山下耕作)を観る。火野葦平の「花と龍」を大きく改変した東映任侠映画。

物語は主人公の玉井金五郎(高倉健)が牡丹蝶のお京(藤純子)と九州・武蔵野温泉の賭場で出会うところから始まります。若松で対立関係にある友田(天津敏)の兄弟分・栗田(諸角啓二郎)の一家に襲われて深手を負った金五郎をお京が救出し介抱。刺青師のお京は金五郎に惹かれており、礼をしたいと言う金五郎の身体に、目玉に京の字を入れた“昇り龍”の刺青をします。若松では金五郎の妻・マン(中村玉緒)がパナマ丸の荷役を巡って友田組相手に奮闘中。若松に帰ってきた金五郎が、強引にパナマ丸へ荷積みをしたことから、友田は金五郎へ喧嘩状を出します。お京に喧嘩の仲裁を頼まれた友田の叔父貴・島村ギン(荒木道子)は、喧嘩場所へ一人できた金五郎に惚れて手打ち式を実行。手打ち式の席上で、金五郎はゴンゾ(沖仲師)の組合結成を持ち出し、友田と険悪な雰囲気になりますが、同席していた友田の親分格の代議士・吉田磯吉(片岡千恵蔵)が組合結成について了承。お京は、金五郎とマンが愛しあっていることを知り、若松を去ります。それから数年後、炭積機の導入によってゴンゾの失業が増え、金五郎は船荷会社とゴンゾの転業資金について交渉しますが、船荷会社から全権委任された友田組と再び対立。胸を患って自分の命が長くないことを知ったお京は、最後の仕事をするために北九州に戻ってきますが、小倉駅で血を吐いて倒れ、元博徒の島崎(鶴田浩二)に助けられます。金五郎は船荷会社への署名を集めるためにギンと島崎の助けで市民集会を開きますが、栗田一家が襲撃。乱闘でギンが殺され、島崎が栗田を殺します。島崎はお京が武蔵野温泉で養生していることを告げ、警察に自首。金五郎は黒幕の友田と話をつけるために事務所に乗り込みます。乱闘となり、友田を殺そうとした時に吉田磯吉が現れ、転業資金について船荷会社が了承したことを告げ、後は自分に任せるように金五郎へ要請。お京のことはマンも知っており、金五郎は武蔵野温泉へ行って、お京に逢います。お京は残されたわずかばかりの力をふるって、金五郎の“昇り龍”の刺青に入れた“京”の字を消し、心も体もマンに返すといって、金五郎に抱かれて死にます。

日本侠客伝シリーズの10作目で、前作『日本侠客伝・花と龍』の続編(原作の怒涛篇)にしたかったようですが、ストーリーに繋がりがなく、金五郎とお京以外は前作とキャストも違います。健さんの相手役として藤純子に重点を置いたために、中村玉緒のマンの存在が薄くなり、金五郎とお京のラブロマンスみたいになりましたな。鶴田や千恵蔵の見せ場も必要で、全体的に散漫となったのは否めませ~ん。

 

週に一度は西部劇

友人が送ってくれた未見の西部劇『渡り者』(1966年/監督:R・G・スプリングスティーン)を観る。無法者のガンマンが保安官となって、悪党退治をする極ありふれた西部劇。

ワイオミングのエンポリアの町は、酒場の主人ゴーア(ジョン・スミス)がカウボーイたちを利用して支配。酒を飲んで暴れまわるカウボーイを止めようとした保安官(リチャード・アーレン)がゴーアの手下(デフォレスト・ケリー)に殺されます。入獄していたガンマンのウェイコ(ハワード・キール)が出獄することになり、娘をカウボーイに乱暴された町長(ロバート・ローリー)はウェイコを保安官に任命。町に着くや、ウェイコは自分の命を狙うカウボーイを鮮やかな手並みで撃退。ウェイコにはジル(ジェーン・ラッセル)という恋人がいましたが、入獄中に牧師のサム(ウェンデル・コリー)と結婚したことを知って、町のために働くという気持ちがうせます。そして、監獄仲間だったロス(ブライアン・ドンレヴィ)を呼んで、町を自分のものにしようと計画。一方、ゴーアはウェイコに恨みを持つ牧場主のジェナー一家を使ってウェイコを殺そうと考え……

かつての人気スターが“昔の名前で出ています”といったような作品。せっかく呼んだドンレヴィは、敵が多くて嫌だといって去り、キールはひとりで戦うはめになるのですが、自分たちの町は自分で守るんだとばかりに味方してくれて悪党を倒します。平凡な話ですが、スプリングスティーンはそつなくまとめており、結構楽しめる西部劇。主題歌(テーマ曲をバックに詩を朗読)は、“ボナンザ”のローン・グリーンで~す。

 

メロドラマの古典で

録画していた『滝の白糸』(1952年・大映/監督:野村昶)を観る。泉鏡花の「義血侠血」が原作で、サイレント時代から6度映画化されており、これは5度目の映画化。新派の人気演目ということで題名だけは知っていた作品。

水島友(京マチ子)は滝の白糸と呼ばれる水芸人。性悪な出刃打芸の寅五郎(羅門光三郎)と金沢までの競走となり、乗り合い馬車の馭者の村越欣也のおかげで勝つことができます。金沢で再会した白糸は欣也に惹かれ、欣也が苦学生と知って援助することを決意。欣也も白糸の純真な心に動かされ、好意を受けることにします。縁日での興行から、大阪の常設劇場での興行は大人気。京都で勉学中の欣也は白糸との短い逢瀬の中で、白糸と将来結婚しようと考えます。興行主の松永(進藤英太郎)から妾になれと言われた白糸は、元のドサ回りの旅に出発。欣也が任官する日が決まり、白糸は用意した祝い金を寅五郎に出刃包丁で脅されて奪われます。白糸は松永に金策を頼みますが、松永は白糸を手篭めにしようとして……

泉鏡花のこの作品と『婦系図』、尾崎紅葉の『金色夜叉』、徳富蘆花の『不如帰』はメロドラマの古典として有名。原作では殺人犯として逮捕された白糸は、検事となった欣也から死刑を求刑されて舌をかんで自殺し、欣也も後を追って自殺するという救いのない話のようですが、この作品では寅五郎が残した出刃で白糸が松永を刺したことから寅五郎が殺人罪で逮捕されます。証言に立った白糸は欣也に正直に話すように促され、罪を告白。白糸は情状酌量で軽い罪となり、欣也は白糸との婚姻届けを出し、二人は結ばれるというハッピーエンドで~す。

 

続いて

録画していた『風船』(1956年・日活/監督:川島雄三)を観る。大佛次郎の原作を今村昌平と川島雄三が脚色したメロドラマ。

かつては天才画家と云われた村上春樹(森雅之)は、現在はカメラ会社の社長。息子の圭吉(三橋達也)と戦争未亡人の久美子(新珠美千代)は愛人関係。娘の珠子(芦川いづみ)は純真な少女で、圭吉に一途な久美子と親しくなります。おもしをつけてない風船のように海外を放浪してきた都築正隆(二本柳寛)はナイトクラブの社長。圭吉は正隆のクラブで歌っているミキ子(北原三枝)に惹かれます。ミキ子は正隆の愛人でしたが圭吉を誘惑。圭吉はミキ子にメロメロ。商用で京都に出かけた春樹は、戦時中に下宿していた家の娘・るい子(左幸子)に偶然会います。両親を亡くした彼女は、弟の学資を得るために夜はバーで、昼はヌードモデルをして働いている健気さにうたれて、彼女への援助を決心。京都滞在用に同家の2階を借りることにします。圭吉の心が自分にないことを知った久美子は自殺。久美子を不憫に思わず、平気でいる圭吉に珠子は悲しみ、京都から帰った春樹は激しい怒りを覚えます。春樹は圭吉を自分の会社から追い出し、老後の人生を考え……

社会の風に流れるまま、風船のような人生を送ってきた男が、自分の生き方を見つけようとする物語なんですが、今イチしっくりきません。悪女役の北原三枝と、純情娘の芦川いづみが魅力的で~す。

 

脚本・監督を注目で

録画していた『地図のない町』(1960年・日活/監督:中平康)を観る。船山馨の原作を橋本忍と中平康が脚色した社会派サスペンス。

スラム街の笠間医院で働いている戸崎慎介(葉山良二)は、市営アパート建設のために住民を立ち退かせようとしている梓建設の社長・梓(滝沢修)の命を狙っています。梓建設の実態は政治家と癒着している暴力団。住民の相談にのっている笠間(宇野重吉)を負傷させ、慎介の妹(吉行和子)は暴行され、幼馴染の加代子(南田洋子)は父親(浜村純)の借金のかたに梓の妾。警察は無力で、加代子の妾宅にやってきた梓を襲いますが、梓はすでに殺されており……

梓の命を狙う経緯がフラッシュバックで描かれる展開で、中平康の映像感覚は悪くありません。犯人探しがメインでなく、社会の底辺で生きる人たちと政治の腐敗を描こうとしているんですが、消化不良で~す。