勘違いから

nostalji2018-05-16

ダビングして持ってきた『武曲MUKOKU』(2017年/監督:熊切和嘉)を観る。生きる気力を失った凄腕剣士と天性の剣の才能を持った少年の対決を描いた作品です。
矢田部研吾(綾野剛)は、父・将造(小林薫)に幼少の頃から剣道で厳しく鍛えられ、一流の剣士となりましたが、父の教えについてゆけず、父との立ち合いで打ち負かし、父を植物人間にしたトラウマからアルコール依存の生活を送っています。将造の友人で研吾の師匠でもある高校剣道部顧問・光邑(柄本明)は、部員が喧嘩して連れてきた羽田融(村上虹郎)に研吾に似た剣の天分を発見。融は台風の洪水で死にかけたというトラウマを持っており、剣道をすることでそれを忘れようとします。光邑は研吾を立ち直らせるために融を研吾のもとへ送り込みますが……
原作者の藤沢周も知らず、監督の熊切和嘉も知らず、俳優の村上虹郎も知らず、単純に剣道映画だと思って観たのですが、文芸的な良質な人間ドラマでした。芥川賞作家の原作なんだから当たり前ですな。熊切和嘉の演出は、語り不足も語り過多もなく、研吾と融の心情を描いていきます。綾野剛は演技力(熱演)で魅せていますが、村上虹郎も自然体の演技でグッド。爽やかなラストには余韻が残りま〜す。