原作は有名だが

録画していた『戦争と平和』(1956年/監督:キング・ヴィダー)を観る。トルストイの大長編小説を映画化した3時間18分の大作映画です。

19世紀はじめ、帝政時代のロシア。ナポレオン(ハーバート・ロム)が大軍を率いてロシアに迫っています。ベズーホフ伯爵の私生児ピエール(ヘンリー・フォンダ)はロストフ伯爵家のナターシャ(オードリー・ヘプバーン)を愛していましたが告白できず、相続した遺産目当ての美女ヘレーネ(アニタ・エクバーク)と結婚。ピエールの親友アンドレイ(メル・ファーラー)は妻を喪い、ロストフ家の別荘でナターシャと知りあい、愛しあうようになりますが、アンドレイの父が強く反対します。ピエールとヘレーネの関係も破局し……

トルストイの原作は読んでおらず、私が『戦争と平和』の物語を知ったのは1966年と67年に二部作で公開されたセルゲイ・ボンダルチュクが監督・主演したロシア映画(ナターシャ役のリュドミラ・サヴェリーエアが可愛かった)なんですが、二部合わせて6時間50分という長さと、登場人物の関係を把握するのにくたびれました。その点、キング・ヴィダーは要領よくまとめていますね。エキストラを大量に使った合戦シーンは、現在の作品では見ることができませんよ。

この作品は、思索的で懐疑的な主人公のヘンリー・フォンダよりも、オードリー・ヘプバーンを主役にして少女趣味的歴史絵巻にしているのが特長。ハバート・ロムのナポレオンをはじめとして、男たちを誘惑する悪妻のアニタ・エクバーク、清純なナターシャを誘惑するアナトールのヴィットリオ・ガスマン、深謀遠慮な食えないクトゥーゾフ将軍役のオスカー・ホモルカなど傍役陣が充実していま~す。