復刊されて

nostalji2013-04-03

ディー・ブラウン:著(鈴木主税:訳)の『わが魂を聖地に埋めよ(上巻)』(草思社文庫:2013年2月8日第1刷発行)を読了。1972年に同社から刊行された著作を文庫で復刊したもので、インディアンと白人の戦いをインディアンの側から書かれたアメリカ西部史です。白人入植者を友好的に受け入れた先住民は、条約という名の謀略で土地を奪われ虐殺されていきました。
上巻は9章からなり、各章は次の通りで、1章:「彼らの態度は礼儀正しく、非のうちどころがない」、2章:ナヴァホ族の長い歩み、3章:リトル・クローの戦い、4章:シャイアン族に戦雲せまる、5章:パウダー・リヴァー侵攻、6章:レッド・クラウドの戦い、第7章:「良いインディアンは死んでいるインディアンだけだ」、第8章:ドネホガワの栄光と没落、9章:コチーズとアパッチ族のゲリラ戦士、となっていて、上巻は1860年代の条約会議で残された速記録に出てくる酋長たちの戦いをドキュメントしています。
約束を破り、力で土地を奪った白人がインディアンに襲撃され殺された結果だけをとらえ、原因を抜きにして、原因と結果を逆転させた欺瞞の論理でインディアンを討伐していくのですが、こうした欺瞞の論理は現在でも見られますね。中国も北朝鮮もシリアも似たような論理展開をしています。ネットなどで情報が全世界に伝わる現在なら、レッド・クラウドたちが言っていることが正論で、アメリカ政府は国際世論の非難にさらされていたでしょうねェ。