吉良常が主人公

nostalji2016-11-16

ダビングして持ってきた『人生劇場』(1972年・松竹/監督:加藤泰)を観る。青春・愛慾・残侠編からなる167分の大作です。これまでに14回映画化されており、青成瓢吉を主人公にした「青春編」と、飛車角を主人公にした「残侠編」に二分されますが、この作品は吉良常を主人公にして「愛慾・残侠編」といった感じになっています。
出所したばかりの吉良常(田宮二郎)は恩のある青成瓢太郎(森繁久彌)の死に立ち会い、息子の瓢吉(竹脇無我)と上京します。深川の小金一家の客分・飛車角(高橋英樹)は愛人おとよ(倍賞美津子)を売った兄貴分の奈良平(汐路章)を殺し、警察に追われる身となり、吉良常のすすめで自首。小説家をめざす瓢吉は、女給お袖(香山美子)や作家照代(任田順好)との愛のもつれに悩みます。小金一家の宮川(渡哲也)は、飛車角の服役中に遊郭でおとよと深い仲になり、出所した飛車角に詫びをいれますが、飛車角はおとよへの愛憎に苦悩。おとよは瓢吉と別れて遊女にまで身をおとしたお袖と仲良くなり、遊郭から逃亡します。小金親分(田中春男)がでか虎(高木均)に殺され、吉良常は飛車角と宮川の仲をとりもって三人ででか虎一家に殴り込み。でか虎を討つものの、宮川も死亡します。上海などで暴れ回った吉良常は昔の傷が悪化し三州吉良へ帰郷。寝込んだ吉良常を見舞うために作家として成功した瓢吉も戻りますが、そこには飛車角や芸者となったおとよ、料亭の女主人となったお袖がいて……
浪花節をうなりつつ息をひきとるのはやり過ぎの感がありますが、田宮二郎の熱演がこの作品に活きています。画面のショット、ショットに何もないシーンはなく、美しい絵に充ち充ちて飽きさせません。ただ、全体として総花的で、焦点が絞れていないのが残念で〜す。