清順作品ということで

録画していた未見の『けんかえれじい』(1966年/監督:鈴木清順)を観る。喧嘩にあけくれる若者の青春物語です。
時代は昭和10年代のはじめ、岡山中学の南部麒六(高橋英樹)は“喧嘩キロク”として有名な存在。キロクは喧嘩のコツを教えてもらった先輩スッポン(川津祐介)の勧めでOSMS団に入ります。OSMS団は岡山中学5年生タクアン(片岡光雄)を団長とするガリガリの硬派集団。OSMS団と関中のカッパ団との喧嘩でキロクは大暴れし、副団長になります。しかし、反逆精神のほとばしるまま、軍事教練の時間に陸軍将校の教官(佐野浅雄)にたてつき、憲兵隊ににらまれて親戚のいる福島の喜多方中学へ転校。そこでも、喜多方中のライバルである会津若松の硬派集団・昭和白虎隊と喧嘩になり……
キロクの喧嘩好きは、ありあまる性欲の吐け口に困っているからなんですな。下宿先の娘・道子(浅野順子)が好きなんですが、指一本触れるどころか、まともに口もきけず悶々としています。敬虔なクリスチャンである道子は、野蛮なキロクには情操教育が必要と、部屋に引き入れてキロクにピアノの練習をさせる始末。キロクはというと、息子が勃起してくると彼女がいないのを見はからって、ピアノのキーを息子でポンポン演奏。若者のセックスの悩みのユーモラスな表現、それを喧嘩で発散させる痛快さを詩情豊かに描いています。226事件の北一輝との遭遇で、右翼的情念への痛切な憧憬に変わるラストの転調は見事。あの時代なりの苦痛とロマンチシズムは清順自身の青春像のような気がしま~す。

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