時代劇から

録画していた『必殺仕事人2023』(脚本:西田征史、監督:石原興)を観る。1年に1回といったような感じで制作されているお馴染み時代劇。

鬼面風邪が蔓延し、疫病改方長官として天野(西村まさ彦)が就任します。渡辺小五郎(東山紀之)は、与力の増村(幾瀬勝久)に命じられて天野のお供をして、越前屋(正名僕蔵)が私財で建てた養生所へ。患者の人数に応じたお助け金が越前屋に給付されており、越前屋は鬼面風邪でない患者まで鬼面風邪と偽って隔離。涼次(松岡昌宏)の知りあいの町娘あかり(志田彩良)は、そのことを知って越前屋一味に殺されます。お菊(和久井映見)は仕事人に依頼してきたあかりの弟の頼みを受け、小五郎・涼次・リュウ(知念侑李)・陣八郎(遠藤憲一)が実行。しかし、越前屋の悪事の黒幕は天野。陣八郎の幼馴染の東庵(橋本じゅん)は評判のよい医者で、助手の文代(秋元才加)と鬼面風邪の特効薬を研究していましたが、天野に誘惑されて文代が成功した調合を自分のものにするために文代を殺します。完成した鬼面風邪の特効薬は金持ちしか買えない高額なもので……

コロナ騒ぎをモチーフにした一編。アマビエの根付まで出てきたのには笑ってしまいました。前半と後半の二段構えの仕事という構成はこれまでと同じ。殺し方は、平凡。陣八郎の死も、とってつけた感じで、感動できませ~ん。

 

週に一度は西部劇

録画していた『新・夕陽のガンマン~復讐の旅』(1967年/監督:ジュリオ・ペトローニ)を観る。マカロニブーム下降期の1968年4月に公開された出来の良いマカロニ西部劇。惹句は、「夕陽が燃える!復讐に賭けた男が燃える!荒野の果て、五人の仇を追ってガンマン遂に最後の決斗!」です。

15年前に両親と姉を殺されたビル(ジョン・フィリップ・ロー)は、復讐する執念だけで生きてきました。記憶にあるのは、首領格の男の顔、左の額から頬にかけて切り傷のある男、変わった耳飾りをつけた男、胸にトランプの刺青のある男、そして、自分を火の中から助け出し、荷馬車の下に押しこんでくれた男のドクロのペンダント。そんなある日、射撃の練習をしているビルの前にライアン(リー・ヴァン・クリーフ)という男が現れます。一味と何か関係があると睨んだビルはライアンの後を追い……

15年前にライアンは現金輸送車を襲った仲間に裏切られて服役したのですが、裏切った仲間というのがビルの復讐の相手と同じで、二人は反発しあい、邪魔しあい、その中で共通の目的を持った男の友情が生まれていきます。『夕陽のガンマン』的感じね。向こう見ずの若者に対して、熟練のガンマンがガンマンとしての心得を授けるところは、同時期の68年5月に公開された『怒りの荒野』に似たところがあります。「一人に弾4発はムダ」とか「背後に気をつけろ」とかね。

最後は仇の一味が占領しているメキシコの村で、村民もたちあがって『荒野の七人』のごとく大銃撃戦。戦いの最中、ビルはライアンの胸にドクロのペンダントを見ます。ライアンが仇の仲間だったことがわかり、対決するラストは予想通りの爽やかなもの。村民がいつのまにかいなくなってアレレというところもありますが、砂嵐の中での銃撃戦は工夫があってグッド。モリコーネのテーマ曲も独特のもので、印象に残ります。

「少年の頃、家族が惨殺され、主人公が犯人たちの特徴を記憶し、年配者から戦いの手ほどきを受けて復讐をとげていくが、師匠も実は…」というプロットは、日本の時代劇『新書・忍びの者』と同じ。さらに、この『新・夕陽のガンマン』からいただいたのが、高倉健の『荒野の渡世人』で~す。

 

懐かしのテレビ西部劇

録画していた『ドクター・クイン大西部の女医物語』のシーズン1を観了。

『ドクター・クイン』は、西部開拓時代を舞台に、女医として活躍するミケーラ・クインを主人公にしたヒューマン西部劇です。6シーズン(全140回)に亘って放送された人気ドラマ。日本では、NHKが1993年~2000年にかけて、中断や再放送をはさみながら放送。その後、CATVでも何度も放送されており、折に触れて観賞していましたが、本格的に再見。

主人公のクイン(ジェーン・シーモア)はボストン育ちの医者の娘。父は息子の誕生を望んでマイケルの名前を用意していましたが、産まれたのが娘だったのでマイケルにaを加えてミケーラという名前にしました。それで、ニックネームがマイク。1860年、米国初の女子医大ペンシルバニア女子医専で医学博士号を得た後、父のもとで7年間医師修行。父が死んだ1867年、独立した女医になろうと、新聞の求人広告で知ったボストンから2千5百キロ離れたコロラド・スプリングスの町にやって来ます。

マイクというニックネームのせいで男性と誤解され、女医に偏見を持つ町の人々には歓迎されず、下宿屋の未亡人シャーロット(ダイアン・ラッド)と風変りなサリー(ジョー・ランドー)だけがマイクの味方。サリーはシャイアン族に育てられたタフで行動力があり、人情にも厚く頼りになる男。

シャーロットが毒蛇に噛まれて死に、マイクはシャーロットから彼女の3人の子ども、マシュー(チャド・アレン)・コリーン(エリカ・フローレス)・ブライアン(ショーン・トゥーベイ)を託されます。サリーから彼がかつて住んでいた小屋を借りて3兄弟と共同生活を始めるとともに、シャーロットの下宿屋を診療所にして開業。治療を通じて住民から信頼されていきます。

シーズン最終話は、サリーのガイドでコロラド・スプリングスへやって来た写真家ワトキンス(ケニー・ロジャース)の物語。目の具合が悪くてマイクに診てもらうのですが、糖尿病が進んでいて、寿命が残り少ないことを知ります。入院生活を送るより想い出に残る写真を撮り続けることを決意。町の人々の集合写真を提案しますが、ローレンたち町を作った人々は、移住者や黒人、酒場女やインディアンと一緒に写ることに反対。別々に撮ろうと対立し移住者と乱闘。しかし、乱闘で壊れたカメラを黒人のロバート・Eが修理し、酒場女マイラと愛しあっているホレスやスウェーデンから移住してきた娘イングリットと仲良くしているマシューを見て、最後は仲直りし、学校の前で皆が写真に収まります。シーズン最終話にふさわしいエピソードでした。

他に観るものがたくさんあって、シーズン2はボチボチ観賞予定。

 

最後の任侠映画ということで

録画していた『日本任侠道・激突編』(1975年・東映/監督:山下耕作)を観る。任侠道に生きる親分を中心に、義理・人情・掟に縛られた男たちを描いた正統任侠映画です。

八王子は竜神一家の竜崎市蔵(高倉健)が仕切っていますが、恋女房のお幸(大谷直子)の兄で兄貴分の扇屋一家の参次郎(渡辺文雄)は新宿・十国組の神戸(小松方正)と組んで八王子に歓楽街を作ることを計画。市蔵はそれに反対し、扇屋一家の土方の親分・房州熊(宍戸錠)が市蔵と敵対します。竜神一家の縄張内で十国組の賭場がたち、そのことを客分の和助(藤山寛美)から聞いた市蔵は代貸の左吉(待田京介)と子分の三五郎(渡瀬恒彦)を連れて乗り込み、賭場をつぶしますが、房州熊の放った銃弾が市蔵を庇った三五郎に命中。数日後、再び十国組の賭場がたち、客分の旅常(北大路欣也)が単身賭場に殴り込み、十国組の若頭を血祭りにあげて逃亡。竜神一家と十国組の抗争を知った秩父・藤ヶ崎一家の大親分・国領(辰巳柳太郎)は代貸の円蔵(田中邦衛)を連れて仲裁に入ります。国領の貫録に、神戸もしぶしぶ市蔵と手打ち。喧嘩の仲裁以来、市蔵に惚れこんだ国領は、藤ヶ崎の跡目を市蔵に継がせることを決心。そのこと知った神戸と参次郎は兄弟分となり、竜神一家をつぶすべく動き出し……

任侠映画の集大成として製作され、正月に公開されましたが、松竹の“男はつらいよ”や、洋画の“007”や“エアポート”など人気シリーズが相手で興行成績は散々。この作品以後、任侠映画は作られなくなりました。実録路線で客をつかんでいる時代に着流しヤクザは古くさいものになっていたんですね。だけど、健さんの着流し姿はいつ見てもカッコいいよォ。

 

若き日の健さん

友人に送ってもらった『無敵社員』(1957年・東映/監督:津田不二夫)を観る。正義感あふれる青年がヤクザまがいの不動産屋をやっつける物語。

黄金バッテリーだった谷(高倉健)と野本(山本麟一)は野球を捨て、デパートに就職していますが、ホワイト・ベアーズのスカウト・飛鳥(花沢徳衛)はあきらめきれず、利江(日野明子)を使って野本を誘惑。その頃、ゲジゲジ組と云われて嫌われている不動産屋の下地(藤井貢)が、谷と野本が勤めるデパートの社長(三條美紀)や、谷と野本が親しくしている居酒屋の千加(浦里はるみ)に法外な権利金を要求。谷と野本はゲジゲジ組のまむしの玄(岩城力)たち暴力社員を追っ払いますが、彼等の嫌がらせはひどくなります。ゲジゲジ組に全て任せているという地主の源婆さんに直談判すると、ゲジゲジ組が勝手に土地の家賃や権利金をピンハネしていたことがわかり、谷と野本はゲジゲジ組に乗り込み、下地をKO。利江は野本に本気で惚れて恋人同士となり、谷は千加との愛を確かめ合ってメデタシ、メデタシで~す。

健さんはデビュー2年目で、クレジットでは千加の妹役の中原ひとみ、それに山本麟一との三人併記です。小宮光江など多くの女性にもてる典型的な二枚目役ですが、演技はド下手。映画の方も陳腐な内容で、何じゃコリャ、で~す。

 

懐かしのB級時代劇

友人に送ってもらった『お役者変化捕物帳・血どくろ屋敷』(1961年・東映/監督:河野寿一)を観る。金座を自分のものにしようとする勘定奉行を正義の浪人が成敗。

天下の浪人・霞一平(高田浩吉)は、今小町と評判のお光(扇町景子)と遊び人の半吉(星十郎)相手に、ころがり込むもめ事なら何でも引き受けるという活躍ぶり。ある夜、ヤクザの三五郎(品川隆二)が、侍たちにわけもわからず斬りつけられたと言ってころがり込んできます。妹・お美代(大川恵子)が御金座・後藤金右衛門(北竜二)の屋敷で女中奉公しているというのを聞くと、一平はすぐさま半吉に三五郎を追ってきた侍の後をつけるように指示。侍たちが消えたのは勘定奉行・坂崎豊後守(坂東好太郎)の屋敷。豊後守の娘おえん(千原しのぶ)は金右衛門の後妻となっており、金右衛門の隠し子・巳之吉の命を狙っています。お美代は金右衛門に命じられて巳之吉に月々の生活費を届けていたことがわかります。巳之吉は殺され、命を狙われたお美代は、一平の親友で瓜二つの人気歌舞伎役者・花村菊之丞(高田浩吉の二役)に匿われており、菊之丞は一平に相談。金座乗っ取りを狙う豊後守は金右衛門も殺そうとしており、菊之丞にご執心なおえんが菊之丞を屋敷に招こうしているのを知った一平は一計を案じ……

観客の動員数は減少していましたが、東映時代劇の製作全盛期は1959年から61年にかけてでした。現代劇の強化ということで第二東映を作ったのですが、現代劇俳優の層の薄さから、半分以上は時代劇。第二東映の時代劇は、高田浩吉近衛十四郎若山富三郎・黒川弥太郎・品川隆二といった他社からの移籍組と、里見浩太朗山城新伍などの若手俳優を中心とした時代劇。公開スケジュールに合わせるだけの粗製乱造は否めません。

この作品もそんな一つ。お笑いタレント(茶川一郎若水ヤエ子)がお笑いサービスをし、白塗り二枚目の高田浩吉が都合よく事件を解決。バストショットばかりの高田浩吉の殺陣も見ていられませんでした。

 

懐かしの時代劇

友人に送ってもらった『恋山彦』(1959年・東映/監督:マキノ雅弘)を観る。1937年にマキノが阪東妻三郎主演で監督した作品のセルフリメイクです。

信州伊那の山奥を所領とする平家一族の末裔・伊那小源太(大川橋蔵)は、三味線の名器・山彦を狙う柳沢吉保柳永二郎)のもとから逃げのびてきたお品(大川恵子)を妻にします。吉保は飯田藩に伊那一族の討伐を命令。飯田藩の軍勢を破った小源太は、飯田藩主の息子・鶴之丞(片岡栄二郎)を捕え、彼を人質に江戸へ乗り込み、将軍に謁見。先祖が授かった天皇からの本領安堵のお墨付きを見せ、吉保の悪政をただすように要求。しかし、吉保の罠にかかり、家臣3名(田崎潤・戸上城太郎・田中春男)は小源太を逃すために斬り死にし、小源太は江戸城の堀に身を投じます。伊那一族の平家村も軍勢に攻められて壊滅。山彦も奪われ、お品は江戸へ向かいます。小源太は絵師の一蝶(伊藤雄之助)に救われており、一蝶の親友・無二斎(大川橋蔵の二役)は小源太とそっくりで……

原作は吉川英治の伝奇時代小説で、現代の感覚からすると古臭さはまぬがれません。私はバンツマ版を観ており、どうしても橋蔵とバンツマを比較することになります。バンツマと比べると橋蔵の殺陣は見劣りがしますな。特に長袴での薙刀の殺陣は、流麗なバンツマと比べて薙刀をもてあましています。バンツマと同じ二役をしたのですが、世をすね、明日を生きる希望を持たない無二斎のキャラは、橋蔵の明るい雰囲気には似合っていなかったのもマイナスで~す。