わかっていても

録画していた『ナイル殺人事件』(2022年/監督:ケネス・ブラナー)を観る。アガサ・クリスティの『ナイルに死す』の2度目の映画化。

エジプトで友人のブーク(トム・ベイトマン)と再会したポアロケネス・ブラナー)は、大富豪のリネット(ガル・ガドット)が主催する新婚旅行ツアーに彼と同行。客船を借り切ってのナイル河クルーズ。リネットの夫サイモン(アーミー・ハーマー)が、かつての婚約者ジャクリーン(エマ・マッキー)に撃たれて負傷する事件がおこり、リネットが射殺されます。ポアロが捜査を開始し……

オリエント急行殺人事件』に続く、ケネス・ブラナーのポワロ。原作は読んでいませんが、ピーター・ユスティノフがポワロを演じた『ナイル殺人事件』(1978年/監督:ジョン・ギラーミン)を観て犯人を知っているので、どうやってサスペンスを盛り上げるかを注目したのですが、残念ながら今イチ。ブラナーは“愛しあう二人”を重点テーマに演出しており、リネットを狙う人物たちの心理を軽く流しています。ミステリー映画の楽しさはないものの、1930年代の風俗とCGによるエジプトの風景は満喫できま~す。

 

週に一度は西部劇

DVDで『血と怒りの河』(1968年/監督:シルビオ・ナリツァーノ)を再見。メキシコの盗賊に育てられた白人の若者が盗賊の父親と対決するクールで哀愁ある西部劇。

メキシコの革命家に両親を殺され、ブルー(テレンス・スタンプ)は盗賊の首領オルテガ(リカルド・モンタルバン)にアスール(スペイン語で青)と名付けられ、実子のように可愛がられて育ちます。一味は国境を越えてアメリカの開拓村を襲撃。仲間が開拓村の娘ジョアンヌ(ジョアンナ・プティット)に乱暴しようとしたところをブルーは仲間を撃ち殺してジョアンヌを救出。しかし、逃げ遅れたブルーは負傷し、今度はジョアンヌに助けられます。彼女の父(カール・マルデン)は快く思いませんが、二人は愛し始め、開拓民としての生活を開始。ブルーが生活になじんできた頃、オルテガが現れます。ブルーは心ならずも開拓者たちと共に育ての親と戦わねばならなくなり、真の親子の愛を感じながら国境の河をはさんで対決。

オーソドックスな西部劇と比べるとかなり異色ですが、映像・音楽・演技が見事に調和した西部劇といえます。シルビオ・ナリッツァーノは、見事な構図でシネスコ画面いっぱいに素晴しい映像美を展開。マノス・ハジダキスの音楽は、ギターを中心としたギリシャ・メロディーが意外と効果をあげ、映画とマッチして、これまでの西部劇にない一味変ったもの。性格俳優のテレンス・スタンプは、抑えた演技でクールな持ち味を出していたし、主人公を愛するようになるジョアンナ・ペティットも、彼女が一番輝いていた頃の作品で、彼女の魅力があふれています。アメリカ人でもなく、メキシコ人でもなく、国境の河を漂いながら主人公が死んでいくラストシーンは哀愁感あふれ、西部劇というだけでなく、映画としての魅力あふれた作品となっていま〜す。

 

ついでに

録画していた『涙をありがとう』(1965年・日活/監督:森永健次郎)を観る。西郷輝彦が日活初出演した歌謡アクション。

七年前に刑事の父といさかいを起こし、船乗りとなって家を飛び出した英也(高橋英樹)が神戸に帰ってきます。父の同僚だった結城(菅井一郎)が経営するバーで沢島組に絡まれている流しの輝夫(西郷輝彦)を助けたことから英也は輝夫に兄貴と慕われるようになるんですな。拳銃密売組織を張り込んでいた刑事の父が殺され、英也は仇をとることを決意。拳銃密売には沢島組が関係していることを知った英也は、沢島(二本柳寛)の用心棒となって潜入。輝夫は沢島の情婦マユミ(久保菜穂子)の妹・美知子(和泉雅子)と知りあい、沢島組に入ります。堅気になることを条件に沢島の身代わりとなって入獄していた輝夫の姉(山本陽子)の恋人が出所しますが、秘密がばれることを恐れた沢島に殺され、輝夫は殺したのは英也とふきこまれ……

粗っぽい物語展開で、褒められたものではありません。歌にアクションに活躍する西郷ファンへのサービス作品ですな。主題歌の他に、「十七才のこの胸に」「青年おはら節」「君はピンクのカーネーション」を劇中で歌っていま~す。

 

ゲスト出演だが

録画していた『花の恋人たち』(1967年・日活/監督:斎藤武市)を観る。日活の青春スターが総出演(舟木一夫も出演)した1968年の正月映画。女医を夢みる七人のインターン学生が織りなす恋と友情を、明るいタッチで描いた青春明朗映画です。

東京女子医大インターン学生である操(吉永小百合)、有為子(十朱幸代)、藤穂(和泉雅子)、和子(伊藤るり子)、万千子(山本陽子)、与志(浜川智子)、ラヤ(斎藤チヤ子)の七人は仲の良いグループで、女医になるために国家試験の勉強と実習に励んでいます。中でも操と有為子は、大学内で一、二を争う秀才。吉岡(浜田光夫)の細菌研究室で学生にとっての最高の名誉ともいえる“学長賞”を狙っています。7人グループの何人かは、年頃とあって次々と華やかなロマンスを展開し……

十朱幸代の裕福な家庭に対して、吉永小百合は父がおらず田舎の病院で働く母(奈良岡朋子)ひとりの貧しい家庭。二人は浜田光夫を密かに想っています。十朱幸代が“学長賞”を獲りますが、浜田光夫が選んだのは吉永小百合。伊藤るり子は山内賢と結婚し、両親に反対されている山本陽子は、弟の舟木一夫や仲間の応援で陶芸家の岡崎二朗と婚約、和泉雅子は十朱幸代の弟・川口恒を好きになります。微温湯的展開が心地よい作品です。

主題歌「恋人たち」は吉永小百合が歌っていますが、舟木一夫も「北風のビギン」を劇中で歌っていま~す。

 

最後に

録画していた『北国の旅情』(1966年・日活/監督:西河克己)を観る。大学の同級生を訪ねた青年が、そこで起こる結婚問題に巻き込まれる青春歌謡映画。

同級生の金井由子(十朱幸代)から婚約の手紙を受けとった英吉(舟木一夫)は、冬休みを利用して由子の故郷である北国の町を訪ねます。英吉からの訪問の手紙を受け取った金井家は大騒ぎ。由子の婚約者は町一番の実力者である蔵元・河原(東野英次郎)の一人息子・健二(山内賢)で、両親(江戸屋猫八と初井言栄)は良縁が壊れることを恐れたんですな。由子は出かけていて、手紙のことも、大騒ぎのことも知りません。金井家に英吉がやってきて、両親があたふたするなか、祖母(北林谷栄)が英吉を招き入れて歓待。由子が帰ってきて、英吉の来訪に驚きながらも喜び、家が大騒ぎになっていたことも知ります。英吉は由子が好きでしたが、由子から健二を愛しているから婚約したと言われ、スキーを楽しむために山へ。由子の妹・妙子(小橋玲子)は、英吉が去った後、泣いている由子を見て、本当は英吉を愛しているのに婚約披露宴を開く姉の不誠実を憎み、山に行きます。妙子がいつまでも帰らないので、捜索隊が出発。一方、英吉は山小屋に妙子がいたので驚きます。訳を聞いて妙子を説得した英吉は、彼女を背負って下山。英吉は、健二と由子は生活と結びついた愛であり、自分と由子は学園の中での友情と悟り……

どの作品も、舟木一夫は恋する人とは結ばれない設定。この映画を観にくる舟木ファン(女性)のことを考えたんでしょうな。何かと優等生の姉と比較されて悩む小橋玲子の妙子役は、ポスターやスチールでは何故か橘和子です。何があったのかなァ。ちなみに、舟木一夫は主題歌の他に、「おやすみ恋人よ」「高校生音頭」を劇中で歌っていま~す。

 

本日は

録画していた『友を送る歌』(1966年・日活/監督:西河克己)を観る。力強い男の友情と、それを見守る清らかな乙女の交流を描いた青春歌謡アクション。

船乗りになることを夢見る良夫(舟木一夫)は、同じ夢を持つ親友の玄一(山内賢)を、2年後に会う約束をして故郷の北海道で見送ります。2年後に良夫は玄一のいる横浜にやってきますが、玄一は行方不明。バッグを盗まれ、困っているところを食堂の娘・みどり(和泉雅子)に助けられます。1年前までみどりと玄一は親しい仲でしたが、現在は音信普通。ハシケの船長・田山(二谷英明)と知りあい、良夫はハシケで働き始めます。休日にみどりと中華街に出かけ、偶然、玄一と再会。玄一は外国航路に乗っていたと語りますが、みどりは玄一が信じられません。玄一は、ヤクザの黒沼(土方弘)の下で密輸品の運び屋をしており……

舟木一夫がヤクザ相手に格闘シーンを見せてくれます。といっても、二谷英明の強力な助っ人があるんですけどね。父(江戸屋猫八)を愛する和泉雅子の、子供の頃に別れた母親とのセンチメンタルな再会を交えて、型通りの展開で、型通りの夢あるハッピーエンド。舟木一夫は主題歌の他に、「今日かぎりのワルツ」「太陽にヤァ!」を劇中で歌っていま~す。

 

続いて

録画していた『東京は恋する』(1965年・日活/監督:柳瀬観)を観る。舟木一夫のヒット曲の映画化。美大を目指す青年とバンドの成功を夢見る青年の、恋と挫折を描いた青春歌謡映画。

美大入学を目指しながら看板屋で働く明男(舟木一夫)は、雨の日にミチコ(伊藤るり子)に出会い一目惚れ。ミチコが落としていったマスコットを拾います。高校時代の親友・健次(和田浩治)と再会したことで、明男は看板屋の主人・文太(葉山良二)の家から健次のアパートへ引越し。洋品店で働くミチコと出会います。しかし、ミチコは健次を愛しており、明男は胸の内を明かせません。健次もミチコを愛していますが、仲間を集めてバンドをやっており、ミチコとの結婚に踏ん切りがつきません。ナイトクラブのオーナーの娘・玲子(山本陽子)の伝手で、健次のバンドがクラブで演奏できることになり……

舟木一夫は、この作品でも恋する二人を支える心優しい親友役。主題歌の他に、「七ツの子」「椰子の実」「虹のむこうに」「成人のブルース」を劇中で歌っています。内容は、周りは好い人ばかりで、型通りの展開で、型通りの夢あるハッピーエンド。スパイダースに入る前の堺正章が、看板屋の助手役で出演していま~す。