舞台ならいいが

nostalji2018-08-22

録画していた『散歩する侵略者』(2017年/監督:黒沢清)を観る。宇宙人の侵略を描いた前川知大の戯曲の映画化です。
加瀬鳴海(長澤まさみ)は、夫の真治(松田龍平)がまるで別人のように穏やかで優しくなったことに戸惑い、真治が毎日散歩に出かけていくことに不審を持ちます。同じ頃、町では一家惨殺事件が発生し、奇妙なことが多発。取材していたジャーナリストの桜井(長谷川博己)は天野(高杉真宙)という若者と知りあい、一家惨殺事件のカギを握る女子高生あきら(恒松祐里)を捜します。真治、天野、あきらの3人は宇宙人で、地球人の調査のため人間の概念を奪っており……
宇宙人が人間の概念を奪うというシュールな設定は、舞台という閉ざされた空間では違和感がないのですが、映画というオープンな空間では演出に工夫がないと何じゃコレになります。宇宙人の地球侵略がテーマでなく、人間の概念をテーマにしているのですが、地球侵略の現実面のバカバカしさだけが目立つんですよ。地球侵略の目的が不明だし、人間をどうしようとしているのかも不明。身体を持たない観念だけの生命体で人間に寄生して侵略するのであれば、ラストの物理的攻撃は必要なし。愛の概念を知って地球攻撃をやめるなんて陳腐そのものです。映画としての感覚がずれている作品で〜す。