懐かしの映画で

録画していた『悪い種子』(1956年/監督:マービン・ルロイ)を観る。恐るべき少女の犯行を描いたサスペンス・ホラーです。

任務についている軍人の夫の留守を守るクリスティーン(ナンシー・ケリー)は、8歳の娘ローダ(パティ・マコーミック)の異常な物欲が心配。ある日、学校のピクニックでローダの同級生の少年が溺死し、その子が持っていた金メダルをローダの机から見つけます。その金メダルはローダが執拗に欲しがっていたもの。クリスティーンがローダを問い詰めると、犯行を認め、さらに以前住んでいた家で、ガラス玉欲しさに老婆を殺したことも知ることになります。クリスティーンは養女で、折から訪ねてきた父親(ポール・フィックス)から、実の母親が世を騒がせた美貌の殺人鬼だったことを聞き出し、茫然自失。ローダが犯行をかぎつけた清掃員を地下室に閉じ込めて焼き殺したことから、クリスティーンはローダと心中を図りますが……

舞台劇の映画化で、犯行の直接シーンはなく、ナンシー・ケリーとパティ・マコーミックの演技で見せる作品です。自分が産んだ娘の体に犯罪者の血が流れていたという母親の苦悩を淡々と、時間をかけて描くことに重点が置かれていますね。冗長なところがありますが、繊細な心理描写は女性映画の名匠マービン・ルロイならではです。現在では隔世遺伝の差別的表現で映画化は不可能でしょうね。それにしても、エンドマークの後のカーテンコールのような明るい演出は蛇足で~す。