懐かしのメロドラマ

ブックオフ(DVDの100円コーナー)でゲットした『旅情』(1955年/監督:デヴィッド・リーン)を観る。学生時代に名画座で観賞して以来の再見です。

オールドミスのジェーン(キャサリン・ヘップバーン)は、心に何かを期待しながら一人旅でベニスにやってきます。フィオリナ夫人(イザ・ミランダ)の経営するペンションに投宿。同宿客のジェーガー夫妻(ダレン・マクガビンとマリ・アルドン)やマクナリー夫妻(マクドナルド・バーグとジェーン・ローズ)には予定があり、ジェーンはひとりでサンマルコ広場へ。喫茶店でコーヒーを飲んでいると魅力的な中年男性(ロッサノ・ブラッツィ)に見つめられているのに気づきます。あたふたとその場を去りますが心に残る面影。翌日、ジェーンは浮浪児マウロ(ガイタノ・アウディエロ)の案内で名所見物をし、通りすがりの骨董店に入ると、そこの主人は昨日の男性。うろたえたジェーンはゴブレットを買い、もう一つ欲しいと言って早々に店を出ますが……

この映画で見たベニスの記憶が長く残っており、イタリア旅行で訪れた時に風景が全然変わっていないのに驚きました。今回再見しても風景は見たまんま。現在に至るまでベニスをこれほど美しく撮りつくした作品にお目にかかっていません。

でもって、ドラマの方ですが、キャサリン・ヘップバーンの名演技が光ります。中年女性の孤独感を、コメディタッチとペーソスを混じえて見事に表現。心では求めているのに、頑なに拒もうとする気持ちが徐々に解放されていく、ほろにがい恋の想い出を詩情豊かに描いた名作です。

一緒に観ていたカミさん曰く、「私もサンマルコ広場の喫茶店であんなふうに一人で座っていたら、素敵な男性が声をかけてくるような雰囲気にさせる映画ね」なんだってさ。