これが最初

録画していた『俺たちに明日はない』(1967年/監督:アーサー・ペン)を再見。『イージー・ライダー』に始まるニューシネマ時代の先駆けとなった最初の作品です。

1930年代初めは大恐慌が尾をひいて失業者があふれ、アメリカは荒廃が全土を覆っていました。そんな中、出所したクライド(ウォーレン・ベイティ)は自動車を盗もうとしてボニー(フェイ・ダナウェー)と遭遇。クライドとボニーは互いに惹かれあい、クライドはボニーの気の強さを、ボニーはクライドの図太さを気に入ります。二人は組んで泥棒をはじめ、犯行はことごとく成功。自動車修理を頼んだ若者モス(マイケル・J・ポラード)も現実に飽き飽きしており仲間に加わります。モスが見張りと運転、ボニーとクライドが強盗をして逃走する毎日。新聞にボニーとクライドの名が売れ、クライドの兄バック(ジーン・ハックマン)と彼の妻ブランチ(エステル・パーソンズ)も一行に加わります。ボニーとクライドの強盗団はバロウズ・ギャングとして新聞が大々的に報道。犯行を重ねる中、ボニーとブランチは事毎に対立して、結局ドジをふむハメになり、警官隊と銃撃戦となります。傷ついた兄夫婦を残して、3人はやっと逃げのび、モスの実家にたどりつきますが……

1930年代に実在したギャング、ボニーとクライドの物語。犯罪映画というより青春映画であり、実録ものというより、「むかし、むかし、こんな若者たちがいた……」という形の伝説物語。フォギー・マウンテン・ボーイズのヒット曲「フォギー・マウンテン・ブレイクダウン」の軽快なメロディーにのせて、田舎道をジグザグに走って逃げていくユーモアたっぷりの前半から、荒野でボニーが母親と別れを告げる幻想的なシーンを経て、クライドとボニーが蜂の巣のように弾丸をぶちこまれるラストのスローモーションまで、死へと魅せられていく青春を印象的に描いています。ラストのスローモーションは、サム・ペキンパーの『ワイルド・バンチ』に影響を与えたと云われていますな。

タイム誌がこの作品を“ニューシネマ”と表現したのですが、言葉として定着したのは、『イージー・ライダー』以後で~す。