欲張りすぎ

録画していた『トレイン・ミッション』(2018年/監督:ジャウマ・コレット・セア)を観る。通勤列車の中で思わぬ陰謀に捲き込まれ、危険なミッションに挑むことになった男を描くサスペンスアクションです。
住宅ローンと息子の学費を抱えたマイケル(リーアム・ニーソン)が、10年間も務めてきた保険会社を突然リストラされます。いつもの通勤列車で帰路についた彼の前に見知らぬ女(ヴェラ・ファーミガ)が現れ、乗客の中からある人物を捜し出したら10万ドル与えるという奇妙なゲームに誘われるんですな。ヒントは、馴染みの乗客でなく、終着駅でおりる、盗品を隠したカバンを持っているプリンと名乗る人物。マイケルは高額報酬に抗えず、元警官のスキルを駆使して乗客を捜しはじめますが……
純粋なサスペンス映画を期待したのですが、途中からは殺し屋と格闘したり、列車の暴走・脱線といったCGアクション映画になりました。色々詰め込み過ぎてサスペンスとしての面白さが希薄になりましたな。主人公が金に困っている元警官という素性を知っているのは限られた人物で、陰謀に加担している怪しい人物がすぐに想像つくのも興覚め。ニューヨークに滞在した時、列車の検札システムに興味をひかれたのですが、その検札システムを活用して、目的の人物を絞り込んでいくところだけが面白かったです。これがヒッチコックだったら、走る列車という閉ざされた空間で目的の人物を捜すというシチュエーションを巧く活用して、余計なアクションをつけ加えることなく、上質なサスペンス映画に仕上げたろうと、ふと思った次第で~す。

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帰省中に観た映画

地元テレビ局が放映した『モネ・ゲーム』(2012年/監督:マイケル・ホフマン)を観る。脚本がコーエン兄弟で、名画を使った詐欺物語というので興味がひかれました。
お話は単純で、英国の美術鑑定士(コリン・ファース)が自分を無能呼ばわりする億万長者(アラン・リックマン)に仕返しすべく、贋作名人(トム・コートネイ)が書いたモネの「積みわら・夕暮れ」を使って詐欺計画を練り上げるんですな。名画の持ち主としてテキサスのカウガール(キャメロン・ディアス)を相棒としてスカウト。カウガールに近づいて仲間に入れと説得するところから計画が成功するまでが画面となって現れるんですが、想像の画面通りにいかないところが、この映画の主眼です。すべてが、「こんなはずではなかった」という展開で可笑しさ満載。
思っていたより洒落た作品だったので、ググって調べてみたら、『泥棒貴族』(1966年/監督:ロナルド・ニーム)のリメイクだったんですね。どうりで、眼鏡をかけたコリン・ファースの雰囲気がマイケル・ケインに似ていたわけです。オリジナル脚本(原案)は、騙し映画の大傑作『テキサスの五人の仲間』のシドニー・キャロル。相棒役をテキサス娘にしたのは、シドニー・キャロルへのリスペクトかな。キャメロン・ディアスの天然ぶりは悪くないのですが、ライオンを縛り上げるのは脚本の筆がすべりすぎた感じ。オリジナルの『泥棒貴族』が観たくなりましたァ。

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帰京

25日に入院している母の治療状況や治療方針を話すカンファレンス出席。主治医・看護師・理学療法士作業療法士・医療相談員・ケアマネージャーによる説明を受けました。リハビリは順調に進んでいますが、貧血からくる低血圧で椅子から起ちあがった時に転倒して骨折したという経緯から内科治療も併せて行っているとのこと。歩行器を使っての日常歩行はできるようになるが、入浴時に浴槽をまたぐ行為はリスクがあるので、退院後はヘルパー利用を考えておく必要がありそうです。4週間後のカンファレンスで、その辺のことを具体化予定。
カンファレンス前の23日に医療相談員が教えてくれた限度額適用認定証(医療機関に提示することで自己負担限度額までの支払いとなる)申請のため区役所へ。入院が長期化すると入院費の支払いが大きくなるので、後で払い戻される高額療養費申請より便利です。本人でなくても委任状があればその場で発行されます。

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移動や待ち時間に、岡崎武志:著の『昭和30年代の匂い』(ちくま文庫:2013年5月10日第1刷発行)を読了。少年時代を大阪で過ごした著者による懐かしいだけでは語りきれない生活の叙述です。
1957年生まれの著者と私のような団塊の世代とでは世代間ギャップがあり、昭和30年代への思いも異なっています。昭和30年代を愛おしくてたまらない私たちと違って、客観的に見つめられるのが強みですね。世代間ギャップで一例をあげれば、“原っぱ”があります。“原っぱ”というのは、工場の空地・宅地用の売地・資材置場・屋敷跡などの町の空地のこと。私たちの頃は、子どもたちは我が家の劣悪な居住空間を抜け出して、町の至る所にあった“原っぱ”で遊んだものです。しかし、著者の子ども時代では、“原っぱ”で子どもがケガをしたりすると土地の所有者の管理責任が問われるてんで、有刺鉄線などで空地に入れなくなり、どんどん“原っぱ”がなくなったとのこと。住宅環境も良くなり始め、遊び場が“原っぱ”から児童公園になっていくんですね。地域によって差はあるでしょうが、一括りに昭和30年代といっても、初めと終わりでは子ども文化に変化がありま~す。


海外ドラマから

WOWOWの『エレメンタリー6ホームズ&ワトソンin NY(全21話)』の観了と、FOXの『ウォーキング・デッド9(全16話)』の最終2話を観る。
『エレメンタリー6』は、シャーロック・ホームズジョニー・リー・ミラー)とジョーン・ワトソン(ルーシー・リュー)が現代のニューヨークを舞台に、市警の顧問としてグレッグソン警部(エイダン・クイン)やベル刑事(ジョン・マイケル・ヒル)と協力して難事件を解決する1話完結型のミステリードラマですが、シーズン6では連続殺人鬼マイケル(デズモント・ハリントン)との対決がサイドストーリーとしてあります。最終話ではマイケルが殺され、ワトソンが容疑者としてFBIに疑われますが、グレッグソン警部の娘が真犯人とわかり、彼らを助けるためにホームズが英国MI6依頼の仕事でマイケルを殺したと名乗り、国外追放。ロンドンのベーカー街でワトソンと探偵業をしているラストはシリーズ最終回(シーズン5あたりから初期のエピソードと比べて謎解きが雑になり、ミステリーとしての面白さがなくなり、視聴率が悪くなったので打切りが予想されていた)を感じさせますが、シーズン7(最終シーズンとなる予定)の製作が決定したとのこと。

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ウォーキング・デッド』のシーズン9前半(全8話)は全て観たのですが、後半の8話は15話と16話を観ただけ。レギュラー陣が次々に降板し、魅力がなくなってきました。集団ドラマで主役もわからず、シーズン10の製作が決定していますが、それほど観たいドラマではなくなってきました。
入院している母の治療経過と今後の計画について担当医より説明があるので帰省します。日記は27日まで休みま~す。


青年文化の始まり

先日(11日)亡くなったモンキー・パンチさん(81歳)に続いて、小池一夫さん(82歳)が亡くなる。モンキー・パンチといえば『ルパン三世』、小池一夫といえば『子連れ狼』ですが、「週刊漫画アクション」でリアルタイムに漫画で親しんだ私としては思い入れがあります。
ルパン三世』が「週刊漫画アクション」で連載開始されたのが1967年。私たち団塊の世代が青年期に入った頃でした。64年の「平凡パンチ」と66年の「週刊プレイボーイ」によって青年文化が芽吹き、子ども文化の最たるものであったマンガも、読者の成長によって青年層を対象としたものになってきます。大人漫画でなく児童マンガの流れにある、青年たちのための新しいストーリーマンガね。それまで“劇画”というスタイルで青年向けマンガを提供していた貸本マンガが終焉を迎え、劇画家や挿絵画家を起用した初の青年マンガ週刊誌が「週刊漫画アクション」でした。
「週刊漫画アクション」の前に月刊誌で、白土三平を中心とする「ガロ」が64年に、「ガロ」に対抗する形で手塚治虫を中心とする「COM」が67年初めに創刊されているのですが、マニアックすぎて一般受けしませんでした。白土劇画や手塚漫画の影響を受けてプロになった若い作家の中から、児童マンガの制約を離れた新しいマンガの可能性に挑戦する者が現れます。モンキー・パンチさんも、その一人。そんな若手を積極的に起用し、『ルパン三世』のヒットもあって「週刊漫画アクション」は青年マンガの基盤となり、「ビッグコミック」「プレイコミック」「ヤングコミック」と、それまで児童マンガ雑誌を手がけていた出版社が新しい分野に参入。69年から70年にかけて創刊ラッシュが巻き起こりました。マンガ家だけでは需要においつけず、小池一夫さんのような脚本家との分業が確立。それは、マンガに新たな道をしめし、表現・テーマをさらに深化させました。同時に私たち団塊の世代はマンガを卒業する必要がなくなり、次世代に続く青年文化の核となって、“大衆文化”へと発達していったので~す。

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時代劇から

BSテレ東で放送していた『お江戸吉原事件帖(全10回)』を観了。テレビ東京の“金曜時代劇”で2007年10月26日から12月21日まで放送された再放送です。テレ東の“金曜時代劇”は、2006年の『逃亡者おりん』から始まり、欠かさずに観ていたのですが、何故かこの作品だけ観逃していたんですよ。前番組の『刺客請負人』も、後番組の『幻十郎必殺剣』も観ているのに不思議です。
『お江戸吉原事件帖』は、吉原で暮らす4人の女が、遊女を泣かす悪い奴らを成敗する“必殺仕事人”みたいな物語。連雀おれん(東ちづる)は、5年前に殺された恋人の仇を捜す吉原の芸者で、三味線の撥で敵の頸動脈を切り裂きます。雲雀ひばり(横山めぐみ)は、妓楼「松葉屋」の遊女の世話をする番頭新造で、小太刀の使い手。孔雀おこう(萬田久子)は、妓楼「松葉屋」の遊女を管理するやり手で、組み紐を使って敵を仕留めます。朱雀あけみ(小林恵美)は、恋文請負業の娘で情報屋。彼女たちを脇からフォローするのが、吉原同心の柴田平八郎(渡辺裕之)と、吉原の影の実力者・甚平(神山繁)です。最終話は前後編で、おれんの仇討ちを軸に、甚平の正体やあけみの実母がわかります。シリーズ全体としては、吉原を舞台にしているのが面白いだけで、後は褒められたものではありません。殺陣は今イチだし、遊女役の若手女優の所作とセリフ(花魁言葉)のぎこちなさには興覚めしま~す。

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まともな時代劇?

録画していた『のみとり侍』(2018年・東宝/監督:鶴橋康夫)を観る。小松重男の同名短編小説を映画化した艶笑人情時代劇です。
長岡藩士・小林寛之進(阿部寛)は、藩主(松重豊)の逆鱗にふれ、“蚤とり侍”になるように命じられます。途方にくれた寛之進ですが、彼を仇討ち捜しの侍と勘違いした“蚤とり”の親分・甚兵衛(風間杜夫)とその妻・お鈴(大竹しのぶ)に気に入られ、彼らの元で働くことになるんですな。“蚤とり”とは、猫の蚤をとる商売ですが、実態は女性に春を売る裏稼業。亡き妻にそっくりな田沼意次桂文枝)の囲い女・おみね(寺島しのぶ)が最初の相手でしたが、開始早々「下手くそ!」と罵られる始末。妻(前田敦子)の目が厳しく、浮気のできない清兵衛(豊川悦司)と知り合った寛之進は、清兵衛の浮気を手伝うかわりに、清兵衛から女の歓ばせ方を教えてもらいます。寛之進の“蚤とり”技術はメキメキ上達しますが……
濃厚なラブシーンが結構ありますが、どれも笑って楽しめるものばかりです。褌ひとつで勝負する阿部寛とトヨエツはグッド。松重豊も表情豊かで巧いなァ。テンポはぬるいものの、落語的面白さで満足で~す。

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