完全版

録画していた時代劇『怪談牡丹燈籠(全4回)』を観了。お露と新三郎の怪談話が、これまでの一般的な“牡丹燈籠”ですが、今回BSプレミアムで放送したものは、初代・三遊亭圓朝の原作の完全映像化です。
大身旗本・飯島平左衛門(高嶋政宏)が刀屋の店先で酒乱の黒川孝藏に絡まれ、刀の試し切りの欲望にかられ、孝藏を斬り殺すところから始まり、20年後、孝藏の息子・孝助(若葉竜也)が父の仇と知らずに飯島家の奉公人となります。平左衛門は気づきますが、孝助に剣術の指導。平左衛門の娘・お露(上白石萌音)は父の勧める縁談に気乗りがせず、医者の山本志丈(谷原章介)の紹介で浪人・萩原新三郎(中村七之助)に出会い、新三郎に恋焦がれます。新三郎もお露を好きになりますが、身分の違いから別れを決意。お露は焦がれ死にし、お露の世話をしていた女中・お米(戸田菜穂)も自死。幽霊となったお露は新三郎の前に現れ、毎夜愛しあいます。それを新三郎の下男・伴蔵(段田安則)が見ており、お露が幽霊と知って人相見の白翁堂勇斎(笹野高志)に相談。勇斎は良石和尚(伊武雅刀)から預かった金の仏像とお札で幽霊封じをしますが、伴蔵と妻のお峰(犬山イヌコ)は欲にかられて幽霊のお米から100両を受け取り、新三郎の身辺から仏像とお札を取り去ります。一方、飯島家では平左衛門の妾・お国(尾野真千子)が隣家の宮沢源次郎(柄本佑)と密通しており、飯島家乗っ取りを計画。孝助はお国と源次郎の計画を知り、源次郎を狙いますが、間違えて平左衛門を刺します。平左衛門は自分が孝助の父の仇であることを告げ、相川新五兵衛(中原丈雄)の屋敷へ行くように命令。孝助は、新五兵衛の娘・お徳との縁談が決まっていたのね。平左衛門は深傷を負いながらも源次郎を殺しに行きますが、逆に殺されます。お国と源次郎は飯島家の金品を盗んで逃走。孝助はお徳と祝言をあげますが、平左衛門への仇を討つためにお国と源次郎を追います。それから1年後、新三郎を裏切って江戸から逃げ出した伴蔵とお峰は栗橋宿で商人として成功しており、伴蔵は料理屋の酌婦になっていたお国に懸想。伴蔵は辻斬りに襲われたと見せかけて嫉妬深いお峰を殺害して河に捨てます。たまたま栗橋宿にいた山本志丈が自分で傷つけた伴蔵の傷を診て、伴蔵の悪事を見抜き、伴蔵を脅迫。伴蔵は志丈も殺して河に捨てますが、お峰の亡霊が河から出てきて、伴蔵を河に引きこみます。お国も志丈に会っており、志丈から孝助が自分たちを捜していることを聞かされ、源次郎と相談して孝助を呼び出し、罠にかけようとしますが……
添い遂げられぬお露と新三郎の幽霊話と、悪女・お国と忠僕・孝助による仇討ち話が交互に絡み合いながら進行していく因縁愛憎劇です。演技が達者な豪華キャストによる、よく出来た人間ドラマだと思います。ただ、幽霊や殺陣に過剰な演出がみられ、もっと素直な演出でもよかった気がしますね。演出の源孝志は、前作『スローな武士にしてくれ』で殺陣にこだわったので、その影響が出たのかな。“牡丹燈籠”の全貌がわかったので大満足で~す。

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画像は、お露の上白石萌音と、新三郎の中村七之助

アメリカならでは

西部劇の友人に教えてもらって録画していた『馬とともに疾れ(はしれ)~世界一過酷な長距離耐久レース』を観る。毎年アメリカで開催されているエンデュランスの「テヴィスカップ」を扱ったドキュメンタリーです。
エンデュランスというのは、馬のマラソンと呼ばれる馬術競技で、何10キロという長距離を馬で走破する耐久レース。なかでも「テヴィスカップ」は、シェラネバダ山脈の道100マイル(160キロ)を24時間以内に走破しなければならず、完走できたら上出来という世界一過酷なレース。途中に16のチェックポイントがあり、制限時間内に到着が必要なうえ、獣医による馬の健康診断が行われます。馬の心拍数や走行チェックで、競技の続行を獣医が決定。騎手は常に馬の状態に気を配る必要があり、まさに人馬一体のレースといえます。
このレースに初挑戦する14歳の少女への取材が中心で、彼女の乗る馬は19歳のアラブ種。これまで4度完走しており、5度完走すると馬の名誉といえるロビーカップが与えられます。少女を指導してきた飼い主は、年齢的にもこれがレース最後となる馬を少女に託すんですな。障害をのりこえて少女は完走。完走者に与えられる銀のバックルを手にします。優勝よりも価値のある5年連続10位内に入ると与えられるハギンカップに挑戦する女性獣医への取材もあり、馬に対する敬意・誇り・愛情に感動。テヴィスカップは、西部開拓時代から馬が生活の一部であったアメリカならではのレースで~す。

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ついでに

ビデオからDVDにダビングして録画保存していた『ジェリコ』(1967年/監督:アーノルド・レーヴィン)を観る。ディーン・マーティンが悪役を演じた本格西部劇です。
モリージーン・シモンズ)の駅馬車会社に投資したベン(ジョン・マッキンタイア)は、駅馬車ジェリコの町へ移送する途中でフラッド(ディーン・マーティン)に撃たれて負傷。駅馬車に乗っていたベンの相棒ドーラン(ジョージ・ペパード)がモリーのもとへ届けます。ジェリコの町はフラッドが支配しており、モリーはフラッドに対抗する組織を作ろうとして、ドーランに協力を求めますが……
元保安官ベンの凄腕保安官助手だったドーランが、手強い相手に最初は気乗りしなかったのですが、フラッドの暴虐ぶりを見かねてベンと力を合わせてフラッドと対決するという平凡な内容。フラッドがモリーに惚れていて、ドーランに何時何時までに町を出ていけというのも定番。撃ちあいシーンは色々ありますが、勝ち気なジーン・シモンズにニヤけるだけのディーン・マーティンの悪党ぶりに迫力がなく、今イチ盛り上がりません。マーティンとしてはイメージチェンジを狙ったのでしょうが、お気楽に歌を歌っている方がむいていま~す。

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昨日に続き

ビデオからDVDにダビングして録画保存していた『底抜け西部へ行く』(1956年/監督:ノーマン・タウログ)を観る。ジェリー・ルイスディーン・マーティンの底抜けコンビが西部で活躍する西部劇コメディです。
ニューヨークで優雅に暮らしているウエイド(ジェリー・ルイス)は、悪党相手に戦って死んだ牧場主だった父に憧れており、父と一緒に戦って死んだ牧童頭の息子スリム(ディーン・マーティン)が、従姉妹のキャロル(ロリー・ネルソン)が継いだ父の遺した牧場の資金援助に来た時、母(アグネス・ムーアヘッド)が勧める結婚話から逃げ出し、スリムと西部へ行こうとします。スリムはウエイドを帰そうとしますが熱心さにほだされ……
ルイスとマーティンの“底抜け”シリーズは16作ありますが、これは15作目。主人公の父に扮したルイスと、それにアグネス・ムーアヘッドの母が絡む冒頭シーンは面白いのですが、後は定石通りのギャグ。コメディアンには色々なタイプがいますが、ジェリー・ルイスは白痴的会話とヘチャ顔、クネクネした動きで笑いをとるスタイル。日本でいえば志村けんタイプといえますかね。
西部劇らしく、リー・ヴァン・クリーフジャック・イーラム、ロン・チャニー・ジュニア、ボブ・スティールなどが、ちゃんと悪党役で出ているのが嬉しいです。端役時代のクリント・イーストウッドがセリフなしで出演している(ルイスが酒場の女性を助けて町に戻って来た時と、悪党が銀行を襲った時に町民として姿を見せている)ことでDVD化もされていま~す。

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観るものがなくて

ビデオからDVDにダビングして録画保存していた『荒野の隠し井戸』(1967年/監督:ウィリアム・グレアム)を観る。荒野に隠された金塊をめぐって繰り広げられるコメディ西部劇です。
シプレイ大佐(ジェームズ・ホイットモア)率いる騎兵隊が輸送していた金塊を部下のファーガス軍曹(クロード・エイキンズ)が無法者のヒルブ(ティモシー・ケリー)、ドク(ロイ・ジェンソン)と組んで、靴屋のベン(ハリー・デイビス)を人質にして床から穴を掘って保管場所から奪いますが、金塊を隠したドクが賭博師のコール(ジェームズ・コバーン)と諍いをおこし、殺されます。コールはドクが持っていた紙幣に地図が書かれていたことから盗まれた金塊と推理。隠し場所へ行く馬を調達するためにインテグリティの町に行き、コパーランド保安官(キャロル・オコーナー)の馬だけでなく、娘のビリー(マーガレット・ブライ)まで頂いちゃうのね。コールが金塊を見つけた時、コールを追ってきたコパーランドが現れます。コールは言葉巧みに金塊の山分けをコパーランドと相談。しかし、ファーガス軍曹がヒルブとベンを連れて現れ、二人を縛りあげ、金塊を奪って逃走。ビリーに助けられたコールとコパーランドは彼らを追ってインテグリティの町に戻ります。ラビニア(ジョーン・ブロンデル)の売春宿で彼らを見つけ出し、銃撃戦となりますが、ラビニアの口車に乗せられたベンがドサクサにまぎれて金塊を持ち去ります。やっとの思いでベンを捕まえたところへシプレイ大佐の騎兵隊が現れ……
『キャット・バルー』と同様に、場面ごとに歌で心情や状況を解説しながら展開していくのですが、楽しくも、おかしくもありません。トボけた笑いを誘おうとしているのですが、ウィリアム・グレアムの演出は見え見えのところがあって、腹の底から笑えないんですよ。それでも、図々しくてトボけた味わいを出しているジェームズ・コバーンはグッド。コバーンが一番油ののっている頃の作品で~す。

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金塊を隠していたのは井戸でなく、原題の『Waterhole №3』の通り、荒野の三番目の水場ね。井戸はWellです。

吸血鬼といっても

録画していた『ダーク・シャドウ』(2012年/監督:ティム・バートン)を観る。200年ぶりに甦り、時代の変化についていけないヴァンパイアを描いたコメディ・ホラーです。
荘園領主だったバーナバス・コリンズ(ジョニー・デップ)は、魔女のアンジェリークエヴァ・グリーン)を失恋させたことからヴァンパイアに変えられ、生き埋めにされます。それから200年経った1972年、町はアンジェリークが支配しており、コリンズ家はすっかり落ちぶれて荘園は荒廃。ビクトリア(ベラ・ヒースコート)はコリンズ家当主エリザベス(ミシェル・ファイファー)の娘キャロリン(クロエ・グレース・モリッツ)の家庭教師に雇われます。コリンズ邸では、他にエリザベスの弟ロジャー(ジョニー・リー・ミラー)、ロジャーの息子デヴィッド(ガリー・マクグラス)、デヴィッドの精神科医ジュリア博士(ヘレナ・ボナム・カーター)が生活しており、いずれもいわくありげな雰囲気。そんな中、工事現場で見つかったバーナバスの棺が開けられ、バーナバスが甦ります。コリンズ邸に戻ったバーナバスは昔の恋人そっくりのビクトリアに惹かれ……
ティム・バートンジョニー・デップのコンビに加えて、周りを固める個性豊かな豪華なキャスト。そのため、ヒロインのベラ・ヒースコートは影の薄い存在になりましたね。エヴァ・グリーン並の強烈さがないとバランスがとれません。ブッラクユーモアにあふれた内容はそれなりに面白いのですが、観ていてグサリと心に突き刺さるものがなく、バートン作品としては平凡で~す。

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SFだが

録画していた『クワイエット・プレイス』(2018年/監督:ジョン・クラシンスキー)を観る。音に反応して人間を襲う生物から身を守って暮らす一家を描いたSFホラーです。
音に反応して人間を襲う生物(クリチャー)によって荒廃した世界で、リー(ジョン・クラシンスキー)とエブリン(エミリー・ブラント)の夫婦、それに娘リーガン(ミリセント・シモンズ)と息子マーカス(ノア・ジュープ)は音を立てない生活をしています。リーガンが聾唖者だったので、家族の会話は手話。エブリンは妊娠しており、出産を控えて最大の危機が……
設定そのものにはツッコミどころ(ラストで発見するクリチャーの弱点なんか、世界が荒廃する前に見つかりそうなもの)がありますが、クリチャーに対していかに身を守っていくかが、だれることなくスリリングに描かれています。退屈な展開にならずに家族の絆も描かれており、低予算作品にしては悪くない作品で~す。

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