歌は世に連れなくなった

nostalji2008-06-27

図書館で借りてきた阿子島たけし:著の『歌謡曲はどこへ行く?』(つくばね舎:2005年3月10日初版発行)を読了。“流行歌と人々の暮らし”とあるように、昭和20年〜40年の歌謡曲と大衆の関わりについて書かれたものです。全体の2/3が昭和20年代に費やされているのは、それだけ大衆の生活と密着していたからでしょうね。「お富さん」のヒットとパチンコ産業の急増が関係していたとは知らなかったなァ。「お富さん」の軽快なリズムがパチンコ店の景気づけにマッチし、客たちの耳に残ったこともヒットの一因としてあったようです。パチンコ帰りのお父さんが「お富さん」を歌いながら帰宅すると、それを聞いていた子どもたちも意味もわからず「お富さん」を歌うようになる。“粋な黒塀、見越しの松”なんて、何のこっちゃ。
昭和30年代は浪曲からポップスまで全てのジャンルの音楽性を歌謡曲が包括していた歌謡曲全盛時代ですが、早い話、大衆が音楽的には低レベルで本物の良さを知らなかっただけなんですね。子供から大人まで満足させた歌謡曲が現在は演歌だけになったのは、若者を中心に音楽レベルがアップし、歌謡曲だけではその多様性を満足できなくなったからでしょう。逆に現在は狭い範囲でしか音楽を楽しめなくなっていますけどね。著者は大人が共感を持つ歌謡曲作りを音楽関係者に求めていますが、利益優先の現代社会にあっては……