名作じゃないが

カミさんと一緒にDVDで『君の名は・第三部』(1954年/監督:大庭秀雄)を観る。完結編なのです。
勝則(川喜多雄二)の同居請求によって東京に戻った真知子(岸恵子)は、綾(淡島千景)の許に身を寄せますが、勝則が春樹(佐田啓二)を裁判所に訴えていることを知って、告訴を取り下げてもらうために、勝則のかつての上司で熊本の副市長をしている永橋(柳永二郎)の保護のもとに当分の間、春樹と逢わないことを約束して雲仙のホテルで働きます。春樹は東京に戻って雑誌社で働いている時、勝則がやって来て、真知子が春樹以外の他の男と結婚するのなら離婚してもよいと言います。真知子には春樹以外の男と結婚する意志はありません。そんなおり、ホテルの常連客の副島(大坂志郎)が真知子に惹かれて求婚。春樹の存在を知った副島は、自分との見せかけの結婚で勝則と離婚し、その後、春樹と結婚するように真知子に勧めますが、春樹と真知子はそれを断り、正々堂々離婚することを誓って春樹は特派員として欧州に出立。勝則と次官の娘・美子(紙京子)との結婚話が出て、美子のドライな態度に姑・徳江(市川春代)は初めて真知子の優しさに気づき雲仙に迎えに行きますが、急性肺炎で倒れます。真知子の献身的介護で徳江は回復。徳江はこれまでのことを真知子に謝罪し、真知子の春樹への想いを知ります。真知子は心身の疲れから病床に伏し、東京に戻って梢(小林トシ子)と愛しあうようになった医師・野島(三橋達也)が勤める病院に入院。勝則は美子を持て余して縁談を断り、真知子に謝罪して離婚届けを渡します。危篤となった真知子のもとに、ヨーロッパから戻った春樹が駆けつけ……
識者の評価では名作とはいえない作品ですが、一部と二部が53年度の興行成績1位と2位、三部が54年度の1位とあっては、映画史において絶対に無視できない作品です。あざといくらいムードを高める霧の情景と感傷的な音楽。日本人好みのご当地風味(数寄屋橋佐渡、鳥羽、伊豆、北海道、雲仙、阿蘇……)たっぷりに、美男と美女のすれちがいに観客は感情移入したんですよ。占領の影が薄れ、日本人にちょっぴり開放的な気分が生まれていた時代にマッチした作品だったので~す。

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