伝説から史実へ

nostalji2009-05-31

NHKハイビジョンで『墓石と決闘』を放映。『墓石と決闘』(1967年/監督:ジョン・スタージェス)は、“OKコラルの決闘”のその後を扱った最初の本格西部劇です。ジョン・スタージェスは、『OK牧場の決斗』で正義の保安官ワイアット・アープを描きましたが、『墓石と決闘』に描かれるワイアット・アープは、復讐を法律の名で美化しようとする私怨の男となっています。当時のアメリカ人にとって、アープは正義を具現する理想の保安官像であっただけに、伝説よりも史実に近づけようとしたスタージェスの試みは失敗に終り、アメリカでの興行成績は惨憺たるものでした。
だけど作品的にみると、講談調の大味な『OK牧場の決斗』より、格段に優れていると思いますよ。それは冒頭の“OKコラルの決闘”のシーンを見ただけでわかります。緊張感がみなぎる構図の素晴しさと、わずか数十秒に凝縮された決闘の迫力。長々と射ち合った『OK牧場の決斗』より、はるかにインパクトがありますね。その後の決闘シーンにも演出的工夫がされており、スタージェスはこの作品で燃焼した感があります。『墓石と決闘』以後の作品には、さすがスタージェスと言わせるようなものがないんですよ。『墓石と決闘』はスタージェス頂点の作品といえま〜す。
画像は、ワイアット・アープ役のジェームズ・ガーナージェームズ・ガーナーといえば、とぼけた味わいが一般的なのですが、冷徹で情け容赦のないアープを見事に演じていました。