週に一度は西部劇

録画保存していた『墓石と決闘』(1967年/監督:ジョン・スタージェス)は、“OKコラルの決闘”のその後を扱った最初の本格西部劇です。

OKコラルの決闘に参加せず生き残ったアイク・クラントン(ロバート・ライアン)は、勝ったワイアット・アープ(ジェームズ・ガーナー)たちを殺人罪で告訴しますが、裁判の結果アープたちは無罪。クラントンは手下に命じて、アープ兄弟のヴァージルを不具にし、モーガンを殺します。連邦保安官に任命されたアープは、法の名のもとに彼らを追跡し、制裁していくんですな。

列車の停車場で、駅馬車の駅停で、アリゾナの山中で、酒場で、牧場でと、クラントン一味を次々に倒していく趣向に工夫があって楽しめます。スタージェスの西部劇に共通するシネスコ画面を上手に使った構図の巧みさがこの作品にも出ており、西部劇特有の雰囲気がビンビン伝わってきますね。

冷酷に仇を殺していくアープに、ドク・ホリデイ(ジェースン・ロバーツ)が「お前も殺し屋と変わりない」と言うのは、世界の保安官としてこれまで大衆に信じられてきた正々堂々としたアメリカの正義に疑問が出てきた時代を反映しているような気がします。ラストは保安官バッジを外したアープがクラントンと1対1の決闘。史実とは異なりますが、決着のつけ方は真に西部劇。

ジョン・スタージェスは、『OK牧場の決斗』で正義の保安官ワイアット・アープを描きましたが、『墓石と決闘』に描かれるワイアット・アープは、復讐を法律の名で美化しようとする私怨の男となっています。当時のアメリカ人にとって、アープは正義を具現する理想の保安官像であっただけに、伝説よりも史実に近づけようとしたスタージェスの試みは失敗に終り、アメリカでの興行成績は惨憺たるものでした。

だけど作品的にみると、講談調の大味な『OK牧場の決斗』より、格段に優れていると思いますよ。それは冒頭の“OKコラルの決闘”のシーンを見ただけでわかります。緊張感がみなぎる構図の素晴しさと、わずか数十秒に凝縮された決闘の迫力。長々と射ち合った『OK牧場の決斗』より、はるかにインパクトがありますね。その後の決闘シーンにも演出的工夫がされており、スタージェスはこの作品で燃焼した感があります。『墓石と決闘』以後の作品には、さすがスタージェスと言わせるようなものがないんですよ。『墓石と決闘』はスタージェス頂点の作品といえますな。

画像は、サントラCDジャケット。音楽を担当したのは、ジェリー・ゴールドスミス。彼にとっては珍しい西部劇ですが、なかなか見事なスコアになっています。約5分もあるメインタイトルの曲がグッド。ティオムキンと比べると勇壮感はありませんが、決闘というドラマの音楽化に成功していると思いま~す。