録画保存していた『関の弥太っぺ』(1959年・大映/監督:加戸敏)を観る。長谷川伸原作の周知の物語なので、切口をどうするかがポイントですね。この作品では主演の長谷川一夫を最大限祭り上げています。一宿一飯の義理から関の弥太郎(長谷川一夫)は徳三(田崎潤)を斬りますが、弥太郎の態度に惚れた徳三は女房に「恨んじゃいけねえ」と言い残して死にます。弥太郎がお小夜を沢井屋に届けるお馴染みの話の後、弥太郎を追ってきた徳三の女房の弟の箱田の森介(勝新太郎)が、姉の忠告をきかずに弥太郎に挑みますが、簡単にあしらわれてしまいます。
それから10年後、弥太郎と森介は笹川一家で顔を合わし、森介が弥太郎に斬りかかりますが、大前田英五郎の娘・お駒(中田康子)が仲裁します。森介と争う気のない弥太郎は笹川一家を立ち去ることにするのですが、お駒から「10年前のお小夜の恩人が見つからなかったことを沢井屋に伝えて欲しい」という依頼を受けます。それを盗み聞いた森介は、先回りして沢井屋に行くんですな。美しいお小夜(中村玉緒)を見た瞬間、森介は恩人の振りをして沢井屋へ居座ります。無理難題を言って森介が沢井屋を困らせている時、弥太郎が現れるのね。斬られそうになる森介をお小夜はかばいますが、弥太郎が持っていた鶯笛を見て、お小夜は恩人が弥太郎であることを想い出します。否定する弥太郎の男らしい態度に、森介はわが身を恥じて姉のもとへ帰って行くのです。
非の打ちどころがない主人公だよォ。長谷川一夫だからだね。動作の終りに決まって流し目をしたり、止まってポーズをとったりするカットは、現在ではパロディにしかなりませんが、大スター長谷川一夫を見せるための必要な演出だったのでしょうね。スター中心だった頃の遺物で〜す。