本格ミステリーを目指して

nostalji2016-12-23

友人に送ってもらった東映時代劇『若さま侍捕物帖・黒い椿』(1961年/監督:沢島忠)を観る。
伊豆の大島へ保養にやってきた若さま(大川橋蔵)は、三原山の火口でお君(丘さとみ)という娘に出会います。若さまは逗留している椿亭の女主人・お園(青山京子)と番頭の金助(田中春男)から、お君の母親が父なし子を産んで村人から責められて火口に身を投げたことを知らされるのね。漁師の祖父(水野浩)と貧しく暮らしているお君を妾にしようとしていた網元の甚兵衛(阿部九洲男)が殺されます。甚兵衛はお園にも色目を使っており、お園を目当てに椿亭に通っていた名主の源兵衛(千秋実)には面白くない存在。お君に恋している油問屋の与吉(坂東吉弥)、お君に江戸で働くように誘う油仲買人の信三(山形勲)、島に来た目的がわからぬ金助の兄という修験者の弥太五郎(河野秋武)など、甚兵衛の周りには胡散臭い人物がいっぱい。弥太五郎が姿を消し、与吉が殺され、殺人を目撃していたお熊が犯人の名を若さまに言おうとしたときに撃たれて殺され、はるか馬で逃げる修験者の姿が……
悪党が若さまを襲って自らボロを出すのでなく、最後まで犯人がわからない本格ミステリーになっています。したがって、最後までチャンバラは無し。大川橋蔵の出番はあまりなく、橋蔵の華麗な殺陣もないので橋蔵ファンには期待外れでしょうね。沢島忠は、『若さま侍捕物帖・紅鶴屋敷』でもそうだったように、東映時代劇の型にはまらない異色な監督といえま〜す。