本格スリラーを目指して

nostalji2016-12-21

友人に送ってもらった東映時代劇『若さま侍捕物帖・紅鶴屋敷』(1958年/監督:沢島忠)を観る。
船祭りの見物にお糸(花園ひろみ)と漁師町にやってきた若さま(大川橋蔵)は、幽霊が出るという噂のある紅鶴屋敷の女中お千代(桜町弘子)と出会います。紅鶴屋敷は江戸の商人・越後屋晴左衛門(原健策)が買い取って住んでおり、晴左衛門の周りには、晴左衛門に恨みを持つ甥の清吉(片岡栄次郎)、漁師町をぎゅうじる網元の茂兵衛(進藤英太郎)、茂兵衛の家に居候している浪人・半次郎(河野秋武)など、胡散臭い人物がいっぱい。村人に慕われている覚全和尚(月形龍之介)も腹に一物ありそう。江戸から帰ってきた晴左衛門が殺害され、死体の上には紅鶴。江戸でも死体の上に紅鶴が置かれた殺人事件があり、岡っ引の遠州屋小吉(沢村宗之助)が若さまを訪ねてやってきます。半次郎が茂兵衛に殺され……
紅鶴屋敷に隠された5千両の金を巡る抜荷買いの仲間割れが事件の真相なんですが、キャストを見れば黒幕はすぐにわかります。紅鶴屋敷で働くお千代の恐怖を主軸にした時代劇スリラーを狙った作品ですが、従来の“若さま侍”シリーズと違って若さまが活躍する場面(チャンバラはラストの大立ち回りだけ)が少なくて評判は良くなかったようです。お千代の視点で描かれていたものが途中で変わるのも、作品的にまずいですね。ショッキング演出が印象に残る異色作ではありますが、失敗作で〜す。