観たかったので

nostalji2017-05-24

時代劇DVD『笛吹川』(1960年・松竹/監督:木下恵介)を観る。深沢七郎の同名小説の映画化で、戦国時代の甲斐・笛吹川のほとりに住む百姓一家の約六〇余年の大河物語です。主役の田村高廣高峰秀子が青年時代から老人になるまでを演じています。
甲斐の国・笛吹橋の袂の百姓家に、おじい(加藤嘉)と婿の半平(織田政雄)、孫のタケ・ヒサ・半蔵(大源寺竜介)が住んでおり、半蔵が領主・武田信虎の戦についていき手柄をたてたのが自慢。信虎に息子が誕生し、おじいが大事なお役目に失敗して、信虎の家来に斬られて死にます。おなじ頃、半平の出戻り娘のミツ(山岡久乃)に息子・定平(田村高廣)が誕生。その後、ミツは定平を置いて甲府の商家・山口屋の後添えになります。半蔵は侍になりますが戦死。半平は定平に戦に行かぬように教育し、おけい(高峰秀子)を定平の嫁に迎えます。定平とおけいの間に長男・惣蔵(松本幸四郎)・安蔵(中村吉右衛門)・ウメ(岩下志麻)・平吉(田中晋二)が誕生。惣蔵が3歳の時に、領主・武田晴信の不興をかった山口屋が焼討ちされ、ミツが殺されます。ミツの娘・タツ荒木道子)は晴信を怨み、武田家を呪いますが、タツの娘・ノブ(伊藤弘子)はそんな母についていけず男と駆け落ち。ノブは男に捨てられ、産み落とした息子・次郎(川津祐介)を恵林寺門前に捨て死にます。川中島の合戦で手柄を立てて侍になった半蔵の息子・虚吉(渡辺文雄)の話を聞いた惣蔵と安蔵は、両親の反対を押し切って信玄なき後の武田家に奉公。長篠の合戦で武田は敗れるものの、惣蔵は出世します。やがて、高遠城の合戦で虚吉が討死。武田家は滅亡の道を進みますが……
敗戦から15年しか経っておらず、戦争の記憶が残っている時代の作品ということを前提に観賞する必要がありますね。この作品に登場する人物は戦時中の国民そのものですよ。戦争を知らない私たちの世代では今イチ感情移入できないところがありますが、それでも戦争の愚かさ虚しさを描く反戦主義以上に深い味わいがあります。
川の流れに彩色して時の経過を強調したり、雲に彩色して時代の不安感を表現するなど、モノクロフィルムに部分彩色した特殊色彩映画ですが、費用対効果を考えると、成功しているかというと疑問です。映画史上、類がないというのは間違いないですけどね。
川中島の合戦シーンだけに先代の中村勘三郎武田信玄)と松本幸四郎上杉謙信)が出演しているキャストだけでなく、エキストラの数、美術や小道具の精緻さ等、映画に金をかけられた良き時代の作品で〜す。