たまにはマンガでも

終活に向けて断捨離している友人から送られてきた寺田ヒロオ:著の『暗闇五段(上下巻)』(小学館:1969年2月10日発行)を読了。

『暗闇五段』は、「週刊少年サンデー」で1963年46号~64年31号に連載された寺田の最後の代表作です。NET(現:テレビ朝日)系列で、『くらやみ五段』の題名でテレビドラマ化(主演は千葉真一、1965年9月7日~66年3月1日放送)されています。

もうれつ道場・五船十段の内弟子・倉見四段は兄弟子の熊手五段を追い抜くほど実力者で、五段に昇進して全国柔道王者戦の道場代表を決める試合で熊手と対決。熊手を破った倉見は、熊手の卑劣な罠で谷川に落ちます。源さんとマツゲちゃんの父娘に救われますが、記憶喪失と盲目になるんです。源さんが鬼天流の柔道家だったことから柔道家としての本能が目覚め、暗闇五段と名乗り、按摩をしながら全国の柔道場で試合。稽古相手だった鬼天流の黒ヒゲ無段や恋人だった五船十段の娘・オニ姫の協力で徐々に記憶が蘇り、再び王者戦に挑むことを決意。熊手は暗闇五段が倉見だと知り、手下を使って罠をしかけますが、そのショックで目が見えるようになります。王者戦で熊手に勝利し、オニ姫とも結ばれ、メデタシ、メデタシ。

熊手の手下が地利塚に鳥居で、チリトリにクマデというマンガ的ネーミングや、コマ割りもオーソドックスでマンガ史的には目新しさはありませんが、線にムダのない絵柄は最近のマンガにはない美しさがあります。それが、劇画と違って迫力不足になっているのは否めません。寺田ヒロオにはこの作品の前に『もうれつ先生』という柔道マンガがあり、それの焼き直しといった感じですが、児童向けであっても、“お兄さん”以上に好きになるマツゲちゃんの恋心とか、オニ姫との恋模様といった人間ドラマもあり、私の好きな作品になっていま~す。