ストーリーは知っているが

録画していた『大菩薩峠』(1960年/監督:三隈研次)を観る。市川雷蔵主演で大映が三部作で作った1作目。内田吐夢版と観比べるのも一興と思いましてね。

大菩薩峠で老巡礼を斬った机龍之助(市川雷蔵)が奉納試合で宇津木文之丞(丹羽又三郎)を殺害。文之丞の妻・お浜(中村玉緒)を犯して妻となし、江戸で暮らします。島田虎之助(島田正吾)の道場で修行している文之丞の弟・兵馬(本郷功次郎)からの果たし状を見たお浜は、龍之助をとめようとして殺され、龍之助は芹沢鴨根上淳)に誘われて京へ。兵馬も近藤勇菅原謙二)と京へ。京・島原の茶屋で龍之助は盗賊の七兵衛(見明凡太郎)に助けられた老巡礼の孫・お松(山本富士子)と遭遇。老巡礼の鈴の音や、お浜の幻を見て狂気となってさまよい出たところへ兵馬が現れ、龍之助に刃をむけます。

高評価だった内田吐夢の『大菩薩峠』の1年半後の公開で、監督の三隈研次は台本を渡されたとき、「吐夢さんが去年、ええシャシン撮ったばかりやないか。また作ったって客が来ない」と言いますが、「雷蔵が乗り気だから、ぜひ撮ってくれ」と言われ、引き受けたとのこと。雷蔵は当時げっそり痩せており、虚無感が滲み出ていてグッド。これが、後の眠狂四郎へ繋がっていくんですな。中村玉緒は当時21歳、お浜とお豊の二役をするにはミスキャストと思われたのですが、業の深い女を妖艶に演じきって、それまでの娘やお嬢様的な役から脱皮します。龍之助の父親役で笠智衆が出演していますが、小津安二郎の映画やそれ以後の映画で見せているような型にはまった演技でなく、ごく自然な演技を見せていましたよ。吐夢版『大菩薩峠』では大河内伝次郎の島田虎之助が新懲組相手の迫力ある殺陣を見せていましたが、島田正吾も大河内ほどの迫力はないものの剣豪らしい風格のある殺陣を見せていま~す。