続いて本日も

録画していた『せかいのおきく』(2023年/監督:阪本順治)を観る。江戸時代を舞台に、つらい現実と向きあう若者たちを描く青春時代劇。

おきく(黒木華)は、貧乏長屋で浪人の父・源兵衛(佐藤浩市)と二人暮らし。寺で子供たちに文字を教えており、雨宿りで中次(筧一郎)と矢亮(池松壮亮)という若者と知り合います。中次は紙屑拾いをしていましたが、もっと金になるという矢亮の汚穢屋を手伝い、江戸の糞尿を農家に売る仕事を開始。おきくの住む長屋を担当し、おきくに惹かれていきます。おきくも中次が気になる様子。源兵衛に果たし状が届き、約束の日に中次と出会った源兵衛は中次に「惚れた相手には世界で一番好きだと言え」と言い遺し、決闘場へ。源兵衛は斬られて死に、懐剣を持って父を追っていったおきくも喉を斬られて声が出なくなります。傷が癒えても家に閉じこもるおきくを気遣う中次や長屋の人々。前のように文字を教えてほしいと子供たちに懇願され、おきくは復帰を決意。中次は手本の文字を書く半紙の束をおきくに贈ります。雪の降りそうな朝、やっとの思いで中次の家にたどり着いたおきくは、身振り手振りで精いっぱいの気持ちを中次に伝えるんです。中次も源兵衛に言われた言葉を思い出し……

2023年度のキネマ旬報ベストテンで第1位に選ばれた作品。貧しいながらも活き活きと日々の暮らしを営み、お金もモノもないけど人と繋がることを恐れず、前を向いて生きていくことをテーマにした珠玉の一編といえます。モノクロ・スタンダード映像で描くことにより、江戸時代の長屋生活がリアルに表現できたといっていいでしょう。黒木華は相変わらず巧いなァ。