最後は

録画していた渥美清主演の『喜劇・初詣列車』(1968年・東映/監督:瀬川昌治)を観る。上越線の新潟と東京・新宿を舞台にした“列車”シリーズ第3作。

上越線担当の車掌となった上田新作(渥美清)は、車内で小学校時代に憧れていた幼馴染の美和子(佐久間良子)と再会。その夜、先輩の野々宮(西村晃)と新潟の盛り場にくり出すと、酔った客(上田吉次郎)に絡まれている美和子と出会います。新作は酔った美和子を介抱し、美和子から東京で働いている弟の研吉(小松政雄)が行方不明になっていることを知らされ、美和子の代わりに研吉捜し。研吉が働いていた印刷工場で、研吉を好きだった房子(城野ゆき)から研吉がいそうな場所を聞きだします。非番の日は家族そっちのけで出かける新作を怪しんだ妻の幸江(中村玉緒)は、新作の弟・夏雄(川崎敬三)に新作の調査を依頼。新作は新宿で“ふうてん”生活をしている研吉を見つけ、家に連れてきます。新作から連絡を受けた美和子は研吉と会い、房子から愛されていることを知った研吉は、“ふうてん”生活を止めて鉄道弘済会に勤務。ラストは新作家族と研吉・房子の伊勢神宮への初詣旅行。

渥美清は小松政雄を捜す過程で、前衛画家の財津一郎や、前衛音楽家大泉滉相手に珍演を見せていますが、基本は“寅さん”と同じ人情喜劇。佐久間良子相手に勘違いの片想いです。NHKのバラエティ『夢で逢いましょう』でアドリブ豊かな達者なエンターテイナーぶりを見せて1962年から63年にかけて一躍人気コメディアンになった渥美清でしたが、その後鳴かず飛ばずで、この“列車” シリーズは“男はつらいよ”へ向けての助走期間だったといえるかもしれません。

ちなみに、瀬川昌治はこの後、松竹でフランキー堺を主演にして“列車”シリーズと同様な“旅行”シリーズ(10本)を手がけていま~す。