懐かしの顔が

西部劇パーフェクトコレクションの『荒野の戦士』(1952年/監督:カート・ニューマン)を観る。先住民の平和に命をかけたインディアン戦士の物語です。

オジブウェイ族のハイアワサ(ヴィンセント・エドワーズ)は平和主義者でしたが、プッキーウィス(キース・ラーセン)は好戦的。酋長会議でハイアワサにダコタ族の、プッキーウィスにイロコイ族の偵察が命じられます。ダコタ族の矢師ラクー(スティーブン・チェイス)が熊に襲われているハイアワサを救出。ハイアワサはラクーの娘ミネハハ(イヴェット・デュグアイ)と親しくなり、愛しあいます。ダコタ族はオジブウェイ族と戦う意思はなく、贈り物としてラクーがダコタの矢を3本用意。ミネハハと結婚の約束をして部落へ帰る途中で、イロコイ族が襲撃の準備をしているのを目撃。偵察に行ったプッキーウィスが狩りをしているイロコイ族の戦士を殺したことが原因でした。ハイアワサの情報でイロコイ族を撃退したことで、ミネハハとの結婚を許されますが……

ハイアワサは、17世紀に互いに戦争状態だった五大湖周辺の5部族に和平をうながし、5部族連合の連邦国家を作ったと云われる実在の人物。物語は好戦的な悪党のたくらみをあばいて対決という殆どフィクションですけどね。白人が入植する前の話なので、登場するのはインディアンだけ。だけどセリフのある役は全て白人俳優。主演のヴィンセント・エドワーズは『ベン・ケーシー』で知られるようになったのですが、それだけでしたなァ。 

ちなみに、『ベン・ケーシー』についてはココヘ⇒ベン・ケーシー | 懐古趣味親爺のブログ (ameblo.jp)

 

今週は西部劇

西部劇パーフェクトコレクションの『荒野の覆面男』(1946年/監督:ジョセフ・ケイン)を観る。無法者と酒場の歌姫の恋物語です。

ゴールドラッシュのカリフォルニア、弟が殺されても法が整備されてなくて犯人が罪にならなかったことからジョニー・バレット(ウィリアム・エリオット)は、昼は賭博師、夜はスパニッシュ・ジャックと呼ばれる覆面の盗賊になります。ソノーラ地方で金を運ぶ駅馬車がスパニッシュ・ジャックによって頻繁に襲われ、保安官(ユージン・パレット)が罠をかけますが、裏をかいて襲撃に成功。ジョニーは酒場の歌姫ベル・マローン(コンスタンス・ムーア)と愛しあっていますが、襲った駅馬車にベルが乗っていて、ベルはジョニーの正体に薄々気づきはじめます。保安官は自警団の中にいるララミー(ジャック・ラルー)がスパニッシュ・ジャックへの内通者と気づきますが、ジョニーはララミーを連れて逃亡。逃げる途中で金を採掘している若者サム(ハンク・ダニエルズ)の小屋で食事の世話になります。ララミーがサムの金を奪おうとしますが、ジョニーはララミーに味方せず、サムに殴り倒されたことからジョニーを裏切ってララミーはひとりで逃走。しかし、保安官に捕まり……

この後、ジョニーはサムと友人になりますが、サムがベルに恋するようになり、ベルをめぐる恋の駆け引きが展開。そして、サムがスパニッシュ・ジャックとして保安官に逮捕され、ジョニーはサムの無実をはらす必要が出てきます。最後は、ウーン。

B級西部劇ですが、意外としっかりした作り方をしています。コンスタンス・ムーアが歌う酒場シーンが多く出てきますが、なかなか豪華なセットです。コンスタンス・ムーアは元々歌手だったので、彼女が歌うシーンをメインにしているところがあり、銃撃戦はついでといった感じですな。

児玉数夫氏によるとウィリアム・エリオットは、ゴードン・エリオットの名前でデビューしましたが、1938年の『ワイルド・ビル・ヒコックの大冒険』でウィリアム・S・ハート以来の適役と絶賛され、ワイルド・ビル・エリオットに改名。その後、B西部劇の“レッド・ライダー”シリーズで人気を得た後、この『荒野の覆面男』からB級西部劇に主演するようになりウィリアム・エリオットと改名したとのこと。ビル・エリオット時代の作品を未見なので何とも言えませんが、同じようにB級西部劇に主演していたジョエル・マックリーやランドルフ・スコットと比べるとモッサリしていて颯爽としたところがありませんな。

 

好き嫌いは別にして

アントニオ猪木が亡くなり、関連本がいろいろ出版されています。『逆説のプロレスVOL.22 アントニオ猪木』(双葉社:2022年12月1日第1刷発行)もその一つ。

猪木個人との交遊録、思い出、エピソードなど猪木礼賛であふれ返っている中で、意外と辛口記事が掲載されています。特にタイガー戸口の猪木評は辛辣。「世界的にみると猪木のプロレスは亜流」には納得。前田が語っていた「猪木さんはプロレスが天才なだけで、プロレス自体はそんなに好きじゃない」にも納得。

新日本プロレスを設立して、ジャイアント馬場と対抗するために、観客にリアルファイトと思わせるような“過激”なプロレス演出をして大成功。直木賞作家の村松友視が「私、プロレスの味方です」で、猪木のプロレスを“過激”なプロレスといったのが最初じゃなかったかな。

それにしても、政府から旭日中綬章が猪木に授与されたのですが、自民党の人気とりが見え見え。功績をたたえるんだったら、生きている時に授与しろよォ。

 

ポイントでゲット

最近は何でもかんでもポイントサービスがあり、知らないうちに溜まっていたポイントで、コンプリート本『キネマ旬報ベスト・テン95回全史』(キネマ旬報社:2022年5月26日初版発行)をゲット。

1924年から2021年までのキネマ旬報が選出した映画ベスト・テンを掲載。年度別ベスト・テンだけを調べるならネット検索で充分なのですが、関連項目も掲載されていたのでね。

登川直樹(1946~55年)・押川義行(1956~65年)・品田雄吉(1966~70年)・八森稔(1971~75年)・小藤田千栄子(1976~96年)・金澤誠(1997~2011年)・金澤誠:邦画&鬼塚大輔:洋画(2012~21年)が、年度別コラムを担当。

1950~71年は興行ベスト・テンが掲載されており、私が最も映画館に行っていた時代なので、興味深かったで~す。

 

殺陣のできる役者なので

録画していた時代劇『燃えよ剣』(2021年/監督:原田真人)を観る。クランクアップから公開までコロナの影響で2年もかかった作品。

物語は土方歳三岡田准一)が想い出を語るという形で始まります。武州多摩での近藤勇鈴木亮平)や沖田総司(山田涼介)との交流。清河八郎高嶋政宏)の浪士隊に応募して京へ行き、新選組を結成。乱暴狼藉を働く局長の芹沢鴨伊藤英明)を暗殺。池田屋襲撃、油小路の暗殺、鳥羽伏見の戦い、そして最期を迎える函館戦争と、架空の人物・お雪(柴咲コウ)との恋模様や宿敵・七里研之助(大場泰正)との対立を絡めて展開。

大河ドラマの総集編のような感じです。文庫本で上下2巻の長編を全て描こうとしたらこうなるんでしょうね。1966年に栗塚旭の主演で映画化されていますが、その時は歴史的背景や新選組史などを省いて七里研之助との対決だけに絞り込んだものでした。

歴史を知らない観客のためか、説明的セリフが多く、人間ドラマが薄くなっています。幕末のことや新選組のことを観客は知っているという前提で作った方が良かったんじゃないかな。殺陣ができる数少ない時代劇俳優となった岡田准一主演だったので何とか見ていられましたけどね。

 

未見だったので

録画していた時代劇『必殺始末人』(1997年/監督:石原興)を観る。映画『必殺!主水死す』でいったん幕を閉じた“必殺”シリーズでしたが、翌年に新たな“必殺”として製作された作品です。

鳥かご作りの浪人・山村只次郎(田原俊彦)は、かもめという女性(南野陽子)という女性を助けようとして奉行所に引っ立てられます。只次郎が大阪で名うての刺客だったことを知っていた牢屋見回り与力・白鳥右京(森次晃嗣)が仕組んだことで、右京は只次郎に奉行所でも裁けない悪人を陰で成敗する始末人になることを要請。処刑されて死んだことになった只次郎は、かもめやリョウ(後藤光利)と始末人を結成。右京の愛人・お駒(朝香真由美)の指示で、権力を利用して悪事を働いているという北町奉行(伊藤敏八)の暗殺に成功。井筒屋の息子が亀甲屋に放火して捕まるという事件がおき、息子は拷問で殺され、井筒屋は亀甲屋に乗っ取られます。只次郎たちは何者かに狙われ、牢屋に出入りする差し入れ屋のおとら(樹木希林)から、事件の黒幕は右京で、奉行暗殺に利用されたことを知らされ……

アイドルのイメージを払拭しようとしている田原俊彦ですが、ニヒルな演技は所詮ムリ。殺陣も所詮ムリなので大立ち回りもなし。南野陽子はスケ番刑事(デカ)みたい。「おまんら許さんぜよ」のセリフはないけどね。“必殺”の定番通りの展開で気楽に観ていられま~す。

 

続いて

録画していた時代劇専門チャンネルの『三屋清左衛門残日録-あの日の声-』(脚本:いずみ玲、監督:山下智彦)を観る。これまた毎年制作されている人気シリーズの6作目です。

孫の成長に喜びを感じながら穏やかな日々を過ごしている三屋清左衛門(北大路欣也)が、墓地に向かう葬列での騒ぎを目撃し、城内で起きた刃傷事件との関わりを知ります。騒ぎを起こしたのは、20年前に清左衛門の前で藩主に直訴しようとして妨げられ、武士をやめて百姓になった赤松東兵衛(伊吹吾郎)で、葬列の亡骸は大関太夫小野寺昭)の養子となっていた東兵衛の実子。刃傷事件は大目付によって相討ちとして片付けられましたが、亡骸の背中の傷に清左衛門は不審を持ちます。事件の背後には不正によって財を蓄えている組頭の丹羽内記(中村育二)がおり、派閥の長である家老・朝田(金田明夫)にも丹羽の金が流れていて、事件を調べた大目付は朝田派。東兵衛も何者かに殺され、斬った太刀筋から東兵衛の息子を斬った同じ人物とわかります。息子の嫁・里江(優香)の幼馴染の青年剣士・亥八郎(駿河太郎)や、親友の町奉行・佐伯(伊東四朗)の協力を得て、清左衛門は悪の根源を暴くために奔走し……

伊東四朗の顔に精彩さがなく、料亭・涌井の女将(麻生祐未)をはさんでの北大路欣也とのやりとりに、これまでの絶妙さがありません。病気でなければいいんですけどね。

藤沢周平の原作は第3作までで終わり、4作目からは藤沢周平の短編をもとに脚色しています。この作品は「闇の顔」と「桃の木の下で」が原作。本筋が「闇の顔」で、併行して描かれる亥八郎と大目付の配下(内田朝陽)に嫁いだ幼馴染の志穂(黒川智花)との恋模様が「桃の木の下で」です。それにしても、主人公と同じ年代になり、「日残リテ昏ルルニ未ダ遠シ」の心境に共感をおぼえま~す。