小説の方が面白い

nostalji2005-12-13

高垣眸:著の『豹(ジャガー)の眼』(少年倶楽部文庫:1975年12月16日第1刷発行)を読了。戦前の少年向け人気雑誌『少年倶楽部』に昭和2年1月号〜12月号に連載された冒険小説です。戦後に映画化やテレビ化されていますが、小説の方が面白いですねェ。主人公は、インカ帝国の王室の血をひく日本人青年。インカ帝国の秘宝を狙う怪人ジャガー(先祖がインカ帝国の宰相)を相手に、太平洋上、サンフランシスコ、アリゾナの奥地を舞台に波乱万丈の活躍をします。
「ぼくは、はじめて自分の身のうえを聞いた瞬間から、白人どもにしいたげ苦しめられている旧インカ帝国の人民たち(何故かアメリカ・インディアンなんですけどね)を、1日も早く幸福にしてやろう。あわせて、わが父の祖国、大日本帝国のためにも、その国運の発展につくそうと、深く覚悟をしたのでした。この大目的のためには、どんな危険をもおそれず、どんな苦しみをも避けません。ぼくは、全世界を敵として戦う勇気が生まれました」主人公のセリフですが、凄い決意でしょう。てらいもなく文章にできたのは、当時の社会環境によるものでしょうが、このストレートさがいいんだなァ。
画像は、伊藤彦造:画による『豹(ジャガー)の眼』の表紙。