真相は……

nostalji2010-07-28

録画していた『TAJOMARU』(2009年/監督:中野裕之)を観る。時代劇ということだけで、他は期待していなかったのですが、予想通りの作品でした。『GOEMON』もそうでしたが、題名をアルファベットにすることで新しさを表現しようとする発想自体が貧相ですね。原作は芥川龍之介の『藪の中』で、その中に登場する多襄丸(小栗旬)を主人公にしたオリジナル作品です。同じ原作を映画化したのが黒澤明の『羅生門』なんですが、比べるだけ酷というものですね。
主人公は名門武家なんですが、地位も名誉も捨てて愛する姫(柴本幸)との旅の途中で盗賊多襄丸(松方弘樹)に襲われます。意識を失っている間に姫は心変わりして逃げ出し、主人公は多襄丸を殺して、自分が多襄丸を名乗ることになるんですな。盗賊の首領となった主人公は、親友同然だった家来(田中圭)が家を乗っ取って自分の名を名乗っていることを知り、家に帰りますが逆に盗賊として捕まってしまいます。裏切りの真相が、関係者の証言が全て異なっていて“藪の中”というのであれば原作のテーマが活きてくると思うのですが、どうでもいいような小栗旬田中圭のチャンバラを長々と見せられたりして、深みのない作品です。135分は長すぎま〜す。
懐かしの時代劇女優・長谷川裕見子(85歳)さんが亡くなる。長谷川一夫の姪だった関係から、1950年代前半は大映作品での出演が多いですが、50年代後半から60年代にかけては東映時代劇の顔になりましたね。葵新吾(大川橋蔵)の母親役で出演した『新吾十番勝負(四部作)』・『新吾二十番勝負(三部作)』は1959年から年2本ずつ公開されたのですが、1961年の『新吾二十番勝負・第二部』の後、完結編が公開されたのは1年とんだ1963年でした。長谷川裕見子さんの長男(船越英一郎)出産のため撮影できなかったからですよ。代替がきかない大物女優でしたねェ。