日本人悲観論

nostalji2012-06-13

中山治:著の『無節操な日本人』(ちくま新書:2000年6月20日第1刷発行)を読了。日本人の根底に流れる情緒に強く支配された生き方を情緒原理主義と名づけて日本人論を展開しています。これに対するのは欧米人の行動原理主義ね。この分け方には、私も賛成です。日本人は矛盾を見つめ、矛盾を鋭く対立させ、矛盾を能動的に解消しようという心の働きが弱いといのは事実で、原発再稼働問題がいい例です。原発事故の徹底的究明と対策も行わず、想定される電力不足に対する徹底したシミュレーションも行わず、矛盾をぼかして自分の利益に都合の良いように事を進める野田総理は、まさに日本人の代表といえますな。
情緒原理主義は“良いとこ取り”の思想で、自分に不都合なところは目をそむけるという欠点があります。日本人がリスク管理に弱いのは不都合なところから逃げるからです。本書は情緒原理主義の悪い面ばかりを強調していますが、明治維新後の急成長や、戦後の経済発展は“良いとこ取り”をした結果で、歴史が始まってから現在まで情緒原理主義で成り立ってきた日本人が欧米のような行動原理主義になるのは無理があります。取り入れるべき他国の良い所(特に文化面)は現在でも沢山あり、著者のいう“自他への懐疑精神を伴った行動原理主義”になるのでなく、“弱点対策を伴った情緒原理主義”が日本人のこれからの生き方だと思いま〜す。