筋がなければ

nostalji2012-08-29

古いキネマ旬報(1962年11月下旬号)をながめる。表紙の人は、ダナ・ウィンターで、私の知らない女優です。特集は、“シナリオライターの座”ね。映画の父・マキノ省三は、映画は「一すじ、二ぬけ(映像)、三役者」と言いましたが、これはシナリオが一番大事ということでなく、シナリオがなければ映画はできないということでしょうね。次に映像で、最後に役者が来るわけです。マキノ省三無声映画の時代の人なので、音について触れていませんが、今なら役者の前に音がくると思います。優れた監督は、優れたシナリオを要求(できあがりシナリオをそのまま使うことはない)しますし、優れたシナリオであれば下手な監督でも出来のよい作品になるので、シナリオが映画の重要要素であることは間違いありません。能力のあるライターが多くなれば、映画が隆盛するといのも間違いありませ〜ん。
録画していた『新・座頭市(第3シリーズ)』の18話〜20話を観る。第18話「犬と道連れ」(監督:南野梅雄、脚本:中村努)は、襲ってきたヤクザを斬った時に巻きぞえをくって傷を負った犬を、市が獣医者(小野進也)に連れて行くんですな。そこには、一宿一飯の義理から市を襲って傷を負ったヤクザ(にしきにあきら)がいて、市と友情が芽生えていきます。
第19話「静かなくらし」(監督:太田昭和、脚本:星川清司)は、道連れとなった老盗(小沢栄太郎)が事故死し、市は老盗が隠した金の地図を老盗の娘(二宮さよ子)に届けることになるんですな。娘は亭主(河原崎次郎)と茶店をしており、そこへ金を狙う無法者(中野誠也)が現れたことから二人の静かな生活が崩れはじめます。
第20話「祭りばやしに風車」(監督:田中徳三、脚本:石田芳子・田中利世・奥村利夫)は、市に指を斬られた賭場荒しの無法者(石橋蓮司)が堅気の風車売りになり、女房(萩尾みどり)と平和に暮らしているところへ、昔の仲間が賭場荒しを誘いにくるんですな。無法者とめぐり合った市は、彼らの生活を守ります。
これで、テレビ版座頭市の全エピソードを観たわけですが、人間ドラマが丁寧に描かれ見応えがありました。カツシンは脚本からセリフをどんどん削り、映像表現のために設定も変えていったそうですから脚本家泣かせだったでしょうね。脚本なしで撮影に入ったこともあるとか。約束事の最後の立ち廻りで斬る相手がいなくなって困ったという話には笑ってしまいましたよ。そのため、個々のシーンは良くても構成面に問題があるエピソードも多々ありました。それでも、できあがりシナリオをそのまま使った駄目ドラマよりは、格段に優れていま〜す。