変則時代劇の後は

nostalji2015-02-27

録画したままだった時代劇『股旅三人やくざ』(1965年・東映/監督:沢島忠)を観る。秋の章(脚本:笠原和夫)、冬の章(脚本:中島貞夫)、春の章(脚本:野上竜雄)からなるオムニバス作品です。“股旅もの”という時代劇映画のジャンルは戦前からあるもので、負の美学(業を背負った人生を宿命にしなければならない)を描くのにもってこいの題材なんですね。
秋の章は、賞金目当てに襲ってきた片目のヤクザを斬った千太郎(仲代達矢)が、一宿一飯の義理で金兵衛親分(内田朝雄)から遊女おいね(桜町弘子)の見張りを頼まれます。金兵衛は裏で役人と通じていて、兇状持ちの千太郎を売ろうとしているのね。おいねが自分が斬った片目の男・猪之助と所帯を持ちたがっていたことを知った千太郎は、猪之助の弟に八州役人に届けて自分にかかった賞金でおいねを請け出すように頼みます。裏切者の金兵衛を斬った千太郎は御用提灯の中へ……
ヤクザの世界をストイックなまでに律儀に生きる男を仲代達矢が好演。男のケジメとして行きずりの遊女のために命を投げ出す男にロマンを感じますねェ。
冬の章は、賭場荒しで大金を手に入れた文造(志村喬)を助けた源太(松方弘樹)が、文造と雪深い一軒家に逃げ込みます。娘(藤純子)が帰ってきて、文造との会話から源太は二人が親子であることに気づきます。文造の金を横取りしようと考えていた源太でしたが、妙に情がわき、やってきた追手の中に飛び出し、そこに雪崩が……
志村喬の味わいある演技がグッド。当初は片岡千恵蔵を予定していたようですが、志村喬で正解ですね。
春の章は、ひょんなことから村人に歓待された旅鴉の久太郎(中村錦之助)が、百姓たちを食い物にする代官所の悪役人(加藤武)を斬ってくれるように頼まれます。久太郎の腕はからっきし駄目で、逃げ出そうとしますが、村娘(入江若葉)の情にほだされ、悪役人の暴虐ぶりをみかねて悪役人と対決。悪役人は子どもたちが仕掛けていた狸の罠にかかり……
のんびりと菜の花畑の中を大根かじりながら歩いてくる錦之助の演技が絶品。宮本武蔵でみせた重厚な演技より、沢島作品における軽い演技の錦之助が私は好きですね。演出的にも、春の書が一番優れており、沢島監督のリズムとペーソスにあふれています。主人公が死んでいく二つの話のあとに明るい話をもってきて締めくくる編成したところに沢島イズムが出ていま〜す。