ニューシネマだが

nostalji2013-04-08

西部劇DVDの『小さな巨人』(1970年/監督:アーサー・ペン)を観る。121歳の老人ジャック・クラブ(ダスティン・ホフマン)が自分の数奇な人生を語る物語です。メイキャップが素晴らしく、ホフマンの演技が光っていますね。ジャックは10歳の時に両親をポーニー族に殺され、シャイアン族の酋長オールド・ロッジ・スキンズ(チーフ・ダン・ジョージ)に育てられます。14歳の時に仲間を救って、酋長からリトル・ビッグマンと名付けられるんですな。16歳の時に騎兵隊襲撃に失敗して白人社会に戻り、牧師夫妻に預けられます。欺瞞に満ちた牧師と好色な牧師夫人(フェイ・ダナウェイ)との生活に耐えられなくなったジャックは家を飛び出し、インチキ薬売り(マーティン・バルサム)と組んで行商し、無法者一味に襲われるんですが、その首領が15年前に別れた姉だったのね。姉から早撃ちを教わり、ワイルド・ビル・ヒコック(ジェフ・コーリー)と知りあいますが、拳銃稼業の非情さを知り、商人として生活し妻も娶ります。そんな生活も束の間、乗っていた駅馬車がインディアンに襲われ、妻がさらわれます。ジャックは第7騎兵隊のスカウトとなって妻を捜すのですが、騎兵隊はインディアン部落を襲い、女子供の見さかいなく撃ち殺すんですな。ジャックは見るにたえず草むらに隠れていて、出産寸前のインディアン娘(エミー・エクルズ)を助けてシャイアンの部落に連れ帰ります。インディアン娘を妻にし、インディアンとして生活をしていたジャックは、政府が指定したシャイアンの保護地ワシタに移りますが、カスター(リチャード・マリガン)率いる第7騎兵隊が襲ってきて無抵抗な女子供を皆殺しにします。ジャックは老酋長をつれて辛くも逃げのびますが、妻子を殺したカスターへの復讐のために、再び第7騎兵隊へ……
この作品の優れている点は、主人公が白人社会とシャイアン族の社会を行き来することで、両方の社会を客観的に見つめていることです。老酋長の言動(チーフ・ダン・ジョージが演技以上の存在感あり)や、主人公と仲間の触れ合いには茶化したところがありますが、異文化への敬愛にあふれています。そして、ユーモア部分とシリアス部分が絶妙に混じりあって、痛烈な白人文明の皮肉になっています。
騎兵隊の行動は、『ソルジャーブルー』と同様にベトナム戦争の批判ね。『ソルジャーブルー』と異なるのは、ワシタ川の虐殺をシャイアン族の一員となった主人公の目を通して描いているので、妻子を惨殺された怒りと悲しみが深く伝わってきます。ダスティン・ホフマンが巧いんだなァ。人間的弱さも見事に表現しています。ホフマンは、これまでになかった新しいタイプで、ニューシネマを代表する存在となりましたね。
西部開拓の裏面を現代感覚でとらえた傑作西部劇で〜す。