西部小説ということで

nostalji2017-02-20

逢坂剛:著の『果てしなき追跡』(中央公論新社:2017年1月25日初版発行)を読了。土方歳三が函館で死なないで、アメリカ西部に行って冒険する西部小説です。
銃弾で頭を負傷して意識不明の歳三を、長崎で英語を習得した同郷の部下が、戦死した兵士を歳三の身代わりにし、函館に停泊していた米国商船と交渉し、歳三を自分の妹(兄とともに長崎で英語を学ぶ)と一緒に密航させます。歳三は負傷がもとで、記憶喪失になったという設定は悪くないと思います。
西部小説に馴染みのない読者の興味を惹かせるために、主人公を土方歳三にしたんでしょうが、含み針の達人というのは如何かなァ。架空の人物なら問題ないのですが、土方歳三にそんな特技があったことは聞いたことがなく、違和感を持ちました。
588ページに及ぶ長編で、最初の三分の一がサンフランシスコに着くまでの出来事、次の三分の一がサンフランシスコの出来事、最後の三分の一が追手を逃れて彷徨う荒野での出来事という構成になっています。末尾に(第一部 完)とありますので、第二部で本格的な西部劇を期待したいのですが、果たして……