懐かしの邦画

DVDで『陸軍中野学校』(1966年・大映/監督:増村保造)を観る。日本陸軍の諜報員養成所だった陸軍中野学校を題材にしたスパイ映画です。

1938年、陸軍幹部候補生の三好次郎(市川雷蔵)は参謀本部の草薙中佐(加東大介)に呼ばれスパイ任務の重要性を教えられます。草薙中佐の極秘命令で、次郎は母(村瀬幸子)と、婚約者の雪子(小川真由美)に行先不明の出張だと言って、他の幹部候補生たちと靖国神社に集合。次郎たちはとまどう暇もなく、外部との連絡を一切断って訓練を受けます。軍服を背広に着換え、変名を使い、軍隊用語は一切禁止。訓練は格闘技から飛行機の操縦にまでわたり、政治・経済・外交問題については大学教授の講義を受けます。やがて、中野電信隊跡に移住した彼らは実地訓練を開始。変装、ダンス、さらには女を悦ばせるテクニックまでね。中にはスパイになりきれず自殺したり、窃盗を働いて強引に自殺させられる者も出てきます。一方、雪子は音信不通の次郎の手掛かりを得ようと参謀本部タイピストになり……

スパイとしての訓練過程が大半を占めるのですが、市川雷蔵を特別スター扱いせず、集団劇として描いているところに特色があります。1年間のスパイ教育の卒業試験として二人の仲間とともに次郎は、盗まれたことが分からないように英国外交電報の暗号コードブックを英国領事館から盗み出すんですが、雪子が英国のスパイになっており、盗まれたことが英国に知られてしまいます。次郎は憲兵隊に任せず、自分の手で自殺に見せかけて雪子を殺害。

任務のため、自分の恋人まで冷徹に殺せる人間となった主人公が、実戦に臨んでどんな行動をとるか、市川雷蔵の新たな魅力をひき出し、『雲一号指令』『竜三号指令』『密命』『開戦前夜』とシリーズ化されま~す。