これで最後

録画していた『悪名一番勝負』(1969年・大映/監督:マキノ雅弘)を観る。長屋の立ち退きを迫る悪徳ヤクザを相手に朝吉が大暴れするシリーズ15作目。

朝吉(勝新太郎)は、大西組の賭場に殴りこんできた花島組の仙次(津川雅彦)を助けたことから花島組の縄張りにある長屋で暮らすことになり、住民たちの用心棒になります。大西(河津清三郎)は新設される貨物の停車場の荷役権利を狙い、長屋を取り壊そうと計画。花島組の代貸・白石(水島道太郎)は大西に縄張りを譲り渡そうとしており、そのことを知ったと仙次は白石が運転するトラックに轢かれて重傷を負います。白石は、直談判しようと大西を訪ねた花島(山本学)も殺害。怒った朝吉は単身殴り込みをかけ……

正月映画らしく、登場人物も朝吉と友情を結ぶ花島組に恩のある元ヤクザ(殴り込みに行って殺される)の田村高広、朝吉が窮地を救い壺振りになった女ヤクザの江波杏子、大西も頭が上がらない江波杏子の親分の辰巳柳太郎、田村高広を愛している芸者の安田道代、花島組の跡取り娘で山本学の妻役の小川真由美、長屋の住人には金子信夫や芦屋小雁がおり、配役は豪華。

時代は昭和初期に変わり、内容だけでなく、朝吉の性格も東映任侠映画の主人公に近いものになっています。人情がらみの“マキノ節”は、従来の“悪名”とは全く違うもので、悪名ファンは戸惑ったでしょうね。結局これがシリーズ最後となりました。

この後、1974年に勝プロが製作し、東宝で配給した『悪名・縄張荒らし』がありますが、シリーズ1作・2作のリメイク(監督は増村保造、モートルの貞は北大路欣也)で、シリーズとは別物と考えていま~す。