西部劇ではないが

DVDで『ハリエット』(2019年/監督:ケイシー・レモンズ)を観る。奴隷から英雄になった不屈の黒人女性の物語。

1849年アメリカ、メリーランド州のギデオン農場の奴隷ミンティ(シンシア・エリヴォ)は、主人のギデオン(ジョー・アルウィン)に反抗したことから売りに出されます。遠い南部に売られたら、二度と家族に会えなくなってしまうのでミンティは逃亡を決意。黒人神父のグリーン(ヴォンディ・カーティス・ホール)から奴隷制が廃止されているペンシルベニアに行くよう教えられます。ギデオンに追いつかれますが、河に跳びこみ、グリーン神父から聞いた人たちの助けもあってフィラデルフィアに到着。奴隷を逃亡させる地下鉄道の責任者の一人ウィリアム(レスリー・オドム・ジュニア)や逃亡奴隷の世話をしているマリー(ジャネール・モネイ)と知りあいます。名前をハリエット・タブマンに変え、地下鉄道で活動開始し……

ハリエット・タブマンは実在の人物。20ドル札のデザインに使われる予定があるほど有名人物ですが、私は知りませんでした。“モーゼ”と尊称された地下鉄道の指導者の一人。地下鉄道というのは奴隷を逃亡させる組織の隠語。逃亡奴隷が隠れる場所が駅で、逃亡奴隷を匿うのが駅長。逃亡奴隷は乗客と呼ばれ、駅から駅を伝って逃亡します。逃亡奴隷を駅から駅へ導く指導者が車掌で、ハリエットは車掌として自分の両親を含め80人以上の奴隷の逃亡を成功させ、さらに南北戦争ではアメリカ史上初の女性指揮官として兵士を動かし、750人の奴隷を船に乗せて北軍領地まで運んでいます。

ギデオンを敵役にし、黒人でありながら金のために奴隷狩りをするハンターまで登場させ、ドラマチックなものにしようとしていますが、平板な展開で演出は今イチ。