週に一度は西部劇

DVDで『西部の男』(1940年/監督:ウィリアム・ワイラー)を再見。1880年代のテキサスを舞台に、男の友情と対決を描いた作品。

牧童と農民が対立している町に、馬泥棒の容疑で流れ者のコール・ハーデン(ゲーリー・クーパー)が捕えられてきます。声高に無罪を叫ぶわけでなく、颯爽と馬に揺られて登場。酒場で裁判にかけられ、陪審員が審議する間、牧童たちのボスで町の実力者ロイ・ビーン判事(ウォルター・ブレナン)が女優リリー・ラングトリー(リリアン・ボイド)に憧れていると知ったコールは、リリーの髪の毛を持っていると偽り、判決を保留させます。

カウンター越しにブレナンとクーパーが会話するのですが、ブレナンの巧いこと。この作品でブレナンはアカデミー助演男優賞を受賞。それに対してクーパーは、地の演技で対抗。セリフよりも何気ない仕種で心の動きを表現しています。

やがて、酒場にコールに馬を売った男(トム・タイラー)が出現。捕まえて自白させようとするコールに対して、ロイ・ビーンは拳銃で男をズドン。コールは無罪が証明され、カリフォルニアに旅立ちますが、途中で立ち寄ったジェーンエレン(ドリス・ダヴェンポート)の家で農民たちが判事をリンチする計画を知ります。ドリス・ダヴェンポートという女優さん、明るく勝気で丸顔のところは東映時代劇の丘さとみのような感じ。

コールは両者を和解させ、農民に平和をもたらします。そしてビーンと友情が芽生えるのですが、「昔、ガラガラ蛇をペットにしていたが、背中だけは見せなかった」と言って、油断はしないということをビーンに告げます。しかし、ビーンは感謝祭の日に牧童たちを使って農民を焼き討ち。ジェーンエレンの父親が殺され、怒ったコールはビーンと対決するためにデュピティ・マーシャル(連邦保安官補)になります。ジョン・ウェインが“アメリカの正義”と云われるのに対して、クーパーが“アメリカの良心”と云われるのは、法にのっとる態度を貫くところにあるのでしょう。

巡業にやってきたリリー・ラングトリーが出演する劇場でコールはビーンと決闘して撃ち倒します。瀕死のビーンを抱き起し、リリーに会わせてやる友情に嫌味がないのがクーパーの魅力です。これぞ、“罪を憎んで、人を憎まず”ですな。

西部の男』は戦前の作品ですが、日本で公開されたのは戦後の1951年でした。1953年にリバイバル上映された『平原児』(1936年/監督:セシル・B・デミル)と『西部の男』により、戦後の西部劇ファンもクーパーの虜になったんですね。

今回再見して気づいたのが、クーパーが入る棺桶のサイズをこっそり測る葬儀屋の存在感。何という役者か知りませんが、バツグンの表現力。セリフを言っていないところをみると、サイレントの役者なんですかね。