懐かしの映画

録画していた『花嫁の父』(1950年/監督:ヴィンセント・ミネリ)を観る。娘を嫁に出す父親の心情を描いたホームコメディ。

ほんの子供だと思っていた娘(エリザベス・テイラー)から「結婚します」と宣言されたスタンリー(スペンサー・トレイシー)は、娘の相手(ドン・テイラー)がしっかりした青年と知るまで、夜もおちおち眠れません。なるべく式を内輪にすませたいと思うスタンリーの意志に反して、妻(ジョーン・ベネット)や娘に「一生に一度のことだから盛大に」と押しきられ、次は披露宴招待者の人選でひともめ。直前に娘は「破談にして」と泣きだしたり、仲直りしたりと、てんやわんや。堂々たる娘の花嫁姿に反し、スタンリーはあがりっぱなし。新婚旅行にでかけた娘から「お父さん、ありがとう」と電話がかかり、沈んでいた彼も生気をとりもどし、妻とハッピーな気分になるのです。

物語は結婚披露宴の後のぐったりしたスタンリーの述懐で始まります。ラストへの見事な伏線です。最初に笑えるのは、娘から相手の名前を聞いてもわからず、フラッシュバックで思い浮かべた中で一番気にいらなかった青年が訪ねてくるところ。トンチンカンな挨拶をするんですな。自分の結婚式に着たモーニングを出してきて、太った身体に無理やり着ようとするのも可笑しかったです。とにかく、スペンサー・トレイシーが上手くて、アット・ホームな笑いがぎっちりと詰めこまれているだけでなく、父親の情愛も自然に表現しています。

花嫁衣裳の他に46種の衣装を見せてくれるリズ・テイラーは、一番美麗だった頃。傍役ではパーティー業者のレオ・G・キャロルが『ナポレオン・ソロ』のウェイバリー部長役で見せたようなとぼけた味わいでグッド。子役時代のラス・タンブリンが次男役で出演していました。

旧い作品ですが、現在でも通用するものがあって、楽しめま~す。