最後に

DVDで『10億ドルの頭脳』(1967年/監督:ケン・ラッセル)を観る。レン・デントンのスパイ小説を映画化した“ハリー・パーマー”シリーズ第3弾。

英国情報部を辞めて私立探偵をしているハリー・パーマー(マイケル・ケイン)にロス大佐(ガイ・ドールマン)が復帰を要請しますが、パーマーは拒絶。そんなパーマーに見知らぬカーナル博士よりヘルシンキへ荷物を運ぶ依頼がきます。密かにX線で荷物を調べると中身は卵。待ち合わせの場所に現れたアーニャ(フランスワーズ・ドルレアック)に連れられて博士に会いますが、現れたのは顔見知りの元情報員のリオ(カール・マルデン)。リオは自分がカーナルだと言いますが、怪しんだパーマーは博士の住所を調べ出して、彼の家に向かいます。博士は殺されており、ロス大佐がパーマーを拉致。運んだのはウイルスに汚染された卵で、それを取り返すようにロス大佐に脅迫まがいに要請され、パーマーは嫌々ながら情報部へ復帰。ロシアも卵を狙っており、諜報将校ストック大佐(オスカー・ホモルカ)がパーマーに接触してきます。リオは共産思想を世界から駆逐しようとしているミドウィンター(エド・ベグリー)の配下となっており、パーマーはリオに連れられてミドウィンターのいるテキサスへ。ミドウィンターは“10億ドルの頭脳”と呼ばれる巨大電子頭脳を使ってロシア侵略を計画。リオが工作資金を横領するために架空のクーデター計画を電子頭脳に入力したことから……

舞台はロンドンから始まり、ヘルシンキ、テキサス、凍り付いた北海とパーマーが大活躍。最初は本格的なスパイ映画のムードだったのですが、舞台がテキサスに移ってから007のような荒唐無稽なスパイ映画になりました。イカサマ性たっぷりのカール・マルデン、妖しい魅力のフランスワーズ・ドルレアック、とぼけた味わいのオスカー・ホモルカなどが絡み、ケン・ラッセルの演出は初監督とは思えないほど、変化のあるアクションとサスペンスが連続し、雪景色も効果をあげています。スケールとしては大きいのですが、リアル感が薄れ、前2作が気に入っていた私には満足できません。

フランスワーズ・ドルレアックはカトリーヌ・ドヌーブの姉で、この作品の後、交通事故死しています。私はドヌーブよりドルレアックの方が好みだったので、悲しかったで~す。

ちなみに、マイケル・ケインのハリー・パーマーは英国では人気があり、この後テレビムービーで原作を離れて2本作られています。