友人に送ってもらった『新吾二十番勝負』（1961年・東映／監督：松田定次）を再見。
“十番勝負”で宿敵・武田一真に勝って日本一の剣客になった葵新吾（大川橋蔵）が土手で寝転がっていると剣気を感じます。土手の上の道には老剣士（大河内伝次郎）。剣気を感じたという新吾に老剣士はその剣気は新吾自身のもので、張りつめておらず、もっと弱くなれと言います。吉川英治の『宮本武蔵』にも似たような場面がありましたな。富士山をバックに新吾と老剣士が対峙する構図はグッド。
新吾と老剣士のやりとりを見ていた六尺六平太（千秋実）が新吾に押しかけ弟子入りをしてきます。新吾の後見職・酒井讃岐守（三島雅夫）は、彦根城中で新吾と父である将軍・吉宗（大友柳太朗）を対面させようと甲賀新八郎（沢村訥升）を派遣。新吾を慕う讃岐守の娘・由紀姫（丘さとみ）も後を追います。その頃、箱根の関所で出会った白根弥次郎（平幹二郎）が新吾に挑戦。関所破りの浪人を斬捨てるシーンは弥次郎の強さをしめしてグッド。
吉宗に対面することなく、彦根城をあとにした新吾は弥次郎と対決。新吾の存在をよく思わない太田備中守（小沢栄太郎）が差し向けた刺客（楠本健二）の放った手裏剣を腕に受けた新吾は、弥次郎の一撃で崖下に転落。新吾は街道で出会った老剣士、実は弥次郎の師匠である納富一無斎に助けられます。京に向かう途中で新吾は、弥次郎に襲われている公家・中院（原健策）を目撃。
新吾と弥次郎が対決というところへ一無斎が現れ、弥次郎は退散。一無斎は弥次郎が京都所司代（北竜二）に金で雇われて暗殺を引き受けたことに怒り、弥次郎を杖で打ちすえます。大河内伝次郎がいかにも剣豪らしい殺陣を見せてくれてグッド。
京都に来た新吾は、京都所司代の悪政のために、荒廃したままになっている御所の塀に心を痛めます。そのことを、腰元になっている新吾の幼馴染・お縫（桜町弘子）から知らされた生母・お鯉の方（長谷川裕見子）が修復費用を用意。禁裏への寄進は違法行為で、太田備中守の提言で吉宗はお鯉の方に謹慎蟄居を命じます。備中守の差し金で、新吾に刺客と京都所司代から討手が差し向けられますが、新吾は父・吉宗に具申のため二条城へ。
だまって見つめあう父子。これが初対面なのね。天下の将軍から父親に返った吉宗の目に涙。思わず涙腺が緩んできましたよ。大友柳太朗の無言の演技が良かったこともあるんですけどね。何も言えずに立ち去る新吾なので～す。
